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「戦争と人間 第一部 運命の序曲」 1970

戦争と人間 第一部「運命の序曲」

★★★★☆

 

あらすじ

 満州での権益を確保するため、軍部をけしかけて戦争勃発を画策する新興財閥。三部作の第一作目。197分。 

 

感想

 3時間を超え、しかもこの後に同じく三時間を超える続編が二本も控えているというなかなか観始めるのに勇気がいる映画。でも観て良かった続編も観ようと思える満足感はあった。とりあえずタイトルから勝手に想像していた単なる反戦映画じゃないのが良い。観ているうちに反戦の気分が巻き起こって来るのは確かだが、でもそれが主題ではない。戦争に向かっていく時代の大河ドラマと言った趣で、歴史ドラマにドロドロとした人間模様を描く人間ドラマ、さらにメロドラマや社会派ドラマなど様々な要素が詰め込まれていて非常に面白い。最近の戦争映画は反戦映画か愛国映画といった印象で、あまり見る気がしないのだが、こういう深みのある描き方も出来るのだよなと再確認した。

 

 映画の中心となるのは満州での権益確保を目論む新興財閥の一族の動き。満州で日本人も中国人も関係なく危害を加えて両国の対立を煽ったり、軍部をけしかけたりと何とか戦争を起こさせようと躍起になる姿が描かれている。結局、軍人と商人が戦争をしたいだけで、それに何故か庶民が乗っちゃうのが問題なのだろうなと思ってしまう。しかしこの財閥の面々は、日本で労働運動を弾圧したり弱者に対する自己責任論をぶったりと、なかなかの憎たらしさを見せており、その徹底したヒールっぷりに惚れ惚れとしてしまう。

 

 

 実際の歴史に沿って物語は進むが、印象に残ったのは満州事変の発端となった柳条湖事件でのシーン。一気に軍事行動を拡大しようとする軍部を止めようと、外交官が法律を読み上げたら「うるさい、黙れ!」と大声を出して無視して終わり。えーっと思ってしまった。法律を守らないなんてただの輩と変わらない。これじゃまともに組織が機能するわけがない。そりゃ戦争も負けるわと一瞬にして悟ることが出来るシーンだった。しかし、もう始めてしまったから今さらやめられないとかそんな理由が通ると思っているのがすごい。これではやった者勝ちだ。しかし日本人の遵法意識なんて今でもこんなもので、なぜか「仕方がなかった」と言えば許されると思っている節がある。「まともに残業代を払っていたら、ほとんどの中小企業は潰れてしまうから仕方がない」とか。

 

 豪華な役者陣も見どころの一つで、50年前の映画の中の彼らは当然だが今の姿やイメージする姿よりも全然若く、それと見比べるだけで面白い。誰にでも若いときはある。そしてまだ現在も活躍する役者もいる中で、出演者の中では中学生役を演じていて最も若い部類に入る中村勘三郎(五代目 中村勘九郎)が、すでに亡くなっているというのも色々と人生について考えさせられる。

  

 それからこの映画は戦後25年に公開された映画なので、当時の観客の多くはこの戦争を経験しているはずだが、彼らがどんな気持ちでこの映画を見たのか気になる。そんな事もあったなとノスタルジックな気分だったのか、こんな行き当たりばったりの戦争に巻き込まれてしまったのかと苦々しい気分だったのか。今だったらバブル時代の映画を観るようなものだろうか。これはたくさんの人が死んでいるわけではないので簡単には比べられないが。

 

スタッフ/キャスト

監督 山本薩夫

 

原作 戦争と人間 1~運命の序曲1、2~ (光文社文庫)


出演 滝沢修/芦田伸介/高橋悦史/浅丘ルリ子/中村勘九郎/高橋英樹/江原真二郎/加藤剛/岸田今日子/地井武男/栗原小巻/山本圭/石原裕次郎/三國連太郎/二谷英明/田村高廣/松原智恵子/大滝秀治/梅野泰靖/大塚弘/浜田晃/(声)鈴木瑞穂

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戦争と人間 (映画) - Wikipedia

戦争と人間 シリーズ 戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

登場する人物

石原莞爾/張作霖

 

 

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