BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「五人の斥候兵」 1938

 

五人の斥候兵

 

★★★☆☆

 

あらすじ

 日中戦争下の中国で斥候に出た5人の兵士は、敵軍に気づかれ窮地に陥ってしまう。キネマ旬報ベスト・ワン作品。

 

感想

  五人の兵士たちが一列になって平原を走るシーンは、躍動感にあふれている。そこから、敵軍に気づかれた五人が窮地を脱するために派手なアクションを繰り広げるのかと思いきや、どちらかというとドキュメンタリータッチでリアリティのある演出だった。それだけに戦場での日常、というような現実味を感じる。

 

 彼らを含む日本軍の和気あいあいとした良い雰囲気が印象的だった。けが人を労り、任務に出かける兵士には励ましの声をかけ、戻ってきた者には出迎えて水だ、食べ物だ、煙草だとねぎらう。今なら何でも自己責任だと冷たい空気が流れるブラック企業みたいになりそうだが、この互いを思いやる皆の姿には温かなものを感じた。

 

 

 そんな空気で悪くない映画だなと思っていたら、兵士たちが感極まったシーンでいきなり「君が代」を歌いだして一気に冷めてしまった。だが大日本帝国下の人間にとっては、ロッキーのテーマが流れたようなものなのかもしれない。民主国家の日本とは違う大日本帝国の人たちなのだなと思い知らされる。

 

 よく考えてみれば日中戦争のさなかに公開された映画で、当時の観客にとってはきっと今観るのと違う感覚でこの映画を見ていたはずだ。その後、実際に戦地に赴いた人たちもたくさんいるのかと思うと複雑な気分になる。そんな状況下でこの映画を見ずに済み、もうちょっとアクションが欲しいとか呑気なことを言ってられるなんて、平和で本当に良かったと思わずにはいられない。

 

スタッフ/キャスト

監督 田坂具隆

 

原作 高重屋四郎(田坂具隆)

 

出演 小杉勇/見明凡太郎/伊沢一郎/井染四郎/潮万太郎/北龍二

 

五人の斥候兵 - Wikipedia

五人の斥候兵 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com