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「戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河」 1971

戦争と人間 第二部「愛と悲しみの山河」

★★★☆☆

 

あらすじ

 満州事変から日中戦争へと突き進む時代に生きる男女。179分。

 

感想

 3部作の第2部にありがちな停滞気味で重苦しい展開となっている。映画「スターウォーズ」旧三部作なら帝国の逆襲が描かれるところだ。この映画では、日本軍が戦線を拡大しようとする中、相手側の抗日運動の機運が高まっていく様子が描かれ、日本の行く末に暗い影を投げかけている。

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 この3部作では日本側の視点だけでなく、ちゃんと相手国側の視点も描いているのがえらい。現地の人に対する差別や高慢な態度など、無かったことにしたいような日本の負の側面もしっかりと描かれている。この頃の戦争映画には必ずこういう描写が入っている印象があるが、当時はまだ戦争体験をした人たちがほとんどなので贖罪の気持ちがあったからなのか、そういうことをきっちりと描くのがお作法となっていたのかもしれない。ただ、そういう事を伝えるのは勿論大事だということは分かっているが、地井武男演じる抗日運動に身を投じる朝鮮人の男が同志の女性の死に悲嘆にくれるシーンは、たっぷりと時間をかけて描き過ぎで、さすがにしんどかった。

 

 歴史ドラマとして大局を描くというよりも、市井に生きる人々の姿を描くことに力点を置いているのがこの第2部の特徴だろう。特に財閥の息子と人妻、財閥の娘と社会運動をする貧しい青年など、男女の恋愛が多く描かれており、メロドラマ的な要素が強い。これは大日本帝国の終わりの始まりが描かれて全体としては暗鬱とした気分になる展開なので、それを中和するための対策だったのかもしれない。とはいえ、ここで描かれる恋愛はどれもどこか物悲しさを感じるものばかりだったが。

 

 

 劇中では中国の人物や都市名、軍閥や政党の動きなど、中国に関するたくさんの情報が登場し、自分はよく分からず何となく雰囲気で理解しているだけだったのだが、これらは当時の観客たちには一般常識的なものだったのだろうか。さらにガダルカナル島など南洋の情報も詳しかったのかもしれない。ある時代では一般常識だったことが、別の時代ではほとんどの人が知らない情報になるというのはなんだか不思議な気分だ。今の一般常識で将来不要になる知識には何があるのか、考えてしまう。

 

スタッフ/キャスト

監督 山本薩夫


原作 戦争と人間 1~運命の序曲1、2~ (光文社文庫)


出演 滝沢修/芦田伸介/高橋悦史/浅丘ルリ子/吉永小百合/北大路欣也/高橋英樹/江原真二郎/加藤剛/山本圭/三國連太郎/岸田今日子/地井武男/南原宏治/栗原小巻/西村晃/佐久間良子/井川比佐志/(声) 鈴木瑞穂

 

戦争と人間 (映画) - Wikipedia

戦争と人間 シリーズ 戦争と人間 第二部 愛と悲しみの山河 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

登場する人物

石原莞爾/張学良/永田鉄山

 

 

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