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「シャーロック・ホームズの凱旋」 2024

シャーロック・ホームズの凱旋 (単行本)

★★★★☆

 

あらすじ

 ヴィクトリア朝京都で名を馳せる探偵、シャーロック・ホームズは、スランプに陥っていた。

 

感想

 京都を舞台にしたシャーロック・ホームズものだ。ホームズの自宅兼事務所はベイカー街221Bではなく寺町通221Bに、京都警視庁と書いて「スコットランド・ヤード」と読む。さらになぜかビッグ・ベンも国会議事堂もあるロンドンと折衷したような不思議な世界だ。ホームズの世界がどんな風に京都に展開されているのか、それを確認するだけでも楽しい。

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 登場人物も、本家同様に語り手であるワトソンをはじめ、ハドソン夫人、レストレード警部といったいつものキャラに加えて、アイリーン・アドラーら各事件で印象深かったキャラたちも登場する。

 

 そしてホームズはスランプに陥っている。事件簿を書いて生計の足しにしていることもあり、ワトソンは何とか彼を復活させようとするのだが、本人は「スランプに陥った謎を解くのだ」などと詭弁を弄してヘラヘラしている。さらには同じく不調だというストランド警部やモリアーティ教授と意気投合して「負け犬同盟」を結成し、互いに傷をなめ合っている。いかにも森見登美彦的世界だ。

 

 

 ちなみに本家では悪役のモリアーティ教授が、何か悪いことを企んでいるのかと思ったが、そういうわけではなく、ここでは普通にスランプの教授だった。この他にもアイリーン・アドラーがホームズに対抗する探偵をしたりと、本家とは違うキャラも多く、それもまた面白い。

 

 なんだかんだでホームズが劇的に復活する展開かと思っていたら、「竹取物語」を絡めながらオカルト方向に話が進んでいった。若干戸惑ったが、そこから本家のロンドンの世界と繋がり、そちらと鏡のようになる設定は興味深かった。そこにはワトソンの悩みやホームズの葛藤、更にはその著者であるコナン・ドイルのジレンマまでもが垣間見えてくる。

 

 そんな展開だが、オカルトと魔術・魔法が切り分けられているのが印象的だ。科学的根拠を重視し、心霊主義を嫌うワトソンやホームズたちともなんとか共存できるラインだろうか。科学的推理をするホームズの物語には、魔力的な面白さが宿っているということもできる。古い歴史を持つ京都には魔物がいそうだし、歴史ある国の高貴な女王がそれを感じ取れるというのもなんだか分かるような気がする。

 

 終盤に向けての思わぬ展開にグイグイと引き込まれていく物語だ。十分に楽しめたが、この魅力的なヴィクトリア朝京都で、シャーロック・ホームズが普通に謎解きする物語も読みたかったなと少し残念に思っている自分もいる。語られざる事件「狸谷山不動院の哲学博士怪死事件」も気になった。

 

著者

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シャーロック・ホームズの凱旋 - Wikipedia

 

 

登場する作品

竹取物語 (岩波文庫 黄 7-1)

 

 

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