★★★★☆
あらすじ
シャーロック・ホームズの活躍を描く12の短編集。
感想
シャーロック・ホームズの短編集だ。ほどよい文量でテンポよく事件解決まで進むのでサクサク読める。長編も悪くないが、この気楽さはなかなか良い。しかも短いからといって軽いわけではなく、どれもちゃんと読み応えがある。
読み進める中で気付いたのは、やってきた依頼者などにホームズの過去の実績として挙げられる事件がとても魅力的なことだ。これまでの作品で取り上げた事件もあるが、そのほとんどはいわば架空の事件だ。本題ではないので軽く触れるだけなのだが、なにそれ?どんな事件なの?、とお願いしたくなるくらい気になる。
序盤に行われるこのヤンキー的なかましが、これから始まる事件へのワクワク感を高めている。これもシリーズの魅力になっているなと思ったのだが、これらは「語られざる事件」という用語にもなっているようだ。
数ある短編の中で好きだったのは「赤毛組合」だ。まずタイトルだけで色々想像してしまう可笑しみがある。赤毛の人たちが集う組織という発想は今のSNS社会みたいで面白いし、集まって何をやるのだろう?と興味も湧いてくる。依頼者が大勢の中から赤毛組合に選ばれるまでの過程もコントみたいな雰囲気があった。
コミカルでありながらも、絶対何か裏があるはずとミステリー的な雰囲気も当然ある。面白がりながらも、頭のどこかで何を企んでいるのだろうと推理している感覚があり、楽しい。そして真相が明らかになってみれば、確かに理に適っていると感心させられた。別のところに注目させる手品のトリックみたいで上手かった。
その他の作品の謎解きも、いくつかピンと来ないものはあったが、ほとんど腑に落ちるものでクオリティが高い。事件の種類も多彩で、世界的人気を得たのも当然だなと、納得させられるものだった
著者
アーサー・コナン・ドイル
収録作品
ボヘミアの醜聞
赤毛組合
花婿の正体
ボスコム谷の謎
オレンジの種五つ
唇のねじれた男
青いガーネット
まだらの紐
技師の親指
独身の貴族
緑柱石の宝冠
ぶな屋敷
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