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「シャーロック・ホームズの事件簿」 1927

シャーロック・ホームズの事件簿 (光文社文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 盗まれた宝石をホームズが犯人から取り戻そうとする「マザリンの宝石」など、12の作品を収めた短編集。

 

 「シャーロック・ホームズ」シリーズの第9作目。

 

感想

 シリーズ最後の作品だ。どの短編も、誰かが殺されてその犯人を捜す、といった単純な形式ではないのが印象的だ。死者さえ登場しないものもある。著者のネタが尽きたのか、それとも飽きたのか。最後なので、今まで事件として語るほどではなかったケースを、というコンセプトが見える。

 

 バラエティに富んだ内容でどれも面白かったのだが、その中でも「高名な依頼人」は良かった。周囲の反対を押し切って悪人と結婚しようとする将軍の娘を思い止まらせようとする内容で、ホームズはこの悪人に手を焼く。脅迫されたり、面会しても何も出来ずに引き下がったりと劣勢だ。

 

 

 そしてついには一味に襲撃され、負傷までしてしまう。ホームズのことだからてっきり何か裏があるのかなと思っていたのだが、何もなかった。シンプルにやられただけだった。その後当然反撃に出るのだが、ホームズの手によるものではないとはいえ、なかなかの仕打ちをこの悪人にしていてエグかった。

 

 またこの短編集には、ワトスンではなく、ホームズ自身が語り手になっている作品があるのも特徴となっている。文中で「ワトスンならこうやって読者の気を引くのだろうが」みたいな言及があり、著者のテクニックの種明かしとなっているのが興味深い。

 

 その他、ハンセン病や進化論を誤解や間違った認識を含みつつ取り上げている作品もあり、作品当時の時代の雰囲気を感じられるものとなっている。中には、え、それだけ?みたいなものもあったが、肩に力が入り過ぎていない感じの作品が並んでいて、気軽に楽しめる。

 

収録作品

「マザリンの宝石」/「ソア橋の難問」/「這う男」/「サセックスの吸血鬼」/「三人のガリデブ」/「高名な依頼人」/「三破風館」/「白面の兵士」/「ライオンのたてがみ」/「隠居した画材屋」/「ヴェールの下宿人」/「ショスコム荘」

 

著者

アーサー・コナン・ドイル

 

シャーロック・ホームズの事件簿 - Wikipedia

 

 

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