★★★☆☆
あらすじ
母親の葬儀で、ブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダー・ロード」に合わせて踊った警官の男は、妻との離婚、娘の素行不良、仕事のトラブルと、様々な悩みを抱えていた。
ジム・カミングス監督・主演。92分。
感想
母親の葬儀で主人公がスピーチをするシーンから映画は始まる。一生懸命に何かを伝えようとしているのは分かるが要領を得ず、しかもなかなか終わる気配のない居心地の悪い時間が続く。そして彼がどうしてもやりたかったらしい、母親の大好きだったブルース・スプリングスティーンの曲で踊るパフォーマンスも、グダグダで終わってしまった。
葬儀で起きがちな笑ってはいけない笑えるシーンだが、可笑しみよりも痛々しさの方が強い。映画全編を通して、そんな主人公の痛々しい空回りが描かれていく。
主人公は職場でトラブルを起こし、その他にも妻との離婚調停、娘の素行不良など数々の問題を抱えている。娘には母親の愛情も必要だと、単独親権ではなく共同親権を要求してしまうのが典型的だが、主人公には「ちゃんとしている理想の自分」と「ちゃんとしていない本当の自分」のせめぎ合いが見られる。いい人間のように振る舞っていても、本心を隠し切れないからいびつな言動になってしまう。それが問題を引き起こし、抑えきれないストレスを更に彼に与える悪循環に陥っている。
もっと自然体でいいのにと思ってしまうが、根が真面目なのだろう。そして、正しいことは何か、ちゃんと分かっている人でもある。そんな人が思い悩んでおかしくなってしまうなんて、悲しい世界だ。
彼ほどではないが、周囲の人々にも同じような苦しみがある。厄介な主人公を見捨てることなくサポートする同僚もそうだし、夢を叶えようと努力したのに挫折して死んだ母親も、その母親に愛されなかったと感じている妹もそうだ。そして娘も、母親に置き去りにされた苦しみを背負ってしまった。きっと誰もが苦しみを抱えながら生きているのだろう。
角度を変えればコメディになりそうな物語だが、痛々しさに溢れた映画となっている。笑いたいけど笑えないもどかしさがあった。だが逆に考えれば、どんな苦境も角度を変えればコメディになるわけで、そういう視点を持てるかどうかで生きやすさは変わってくるのかもしれない。母親の大好きだったバレエを見て、輝いた表情を見せるラストの娘に救いを感じる。
敢えてなのか、大人の事情なのか分からないが、映画タイトルの元になったブルース・スプリングスティーンの「涙のサンダー・ロード」が一度も聴けなかったのは残念だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/編集/音楽/出演 ジム・カミングス
出演 ケンダル・ファー/ニカン・ロビンソン/ジョセリン・デボアー/チェルシー・エドマンドソン/メイコン・ブレア/ビル・ワイズ
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