★★★☆☆
あらすじ
わるびれない悪人たちを、ネットで予告して退治していく覆面の男が現れ、刑事はそれを追う。
生田斗真主演、戸田恵梨香、鈴木亮平、濱田岳ら出演。119分。
感想
悪人たちに制裁を下していく男たちが主人公だ。彼らの過去を回想しつつ進行していく。
彼らの私刑のターゲットは、不祥事をするも開き直る会社や犯罪被害者を侮辱する男など、庶民感情を逆なでするも警察は動きにくい相手ばかりだ。もうちょっと痛快に描くとか、実行時の緊張感が伝わるようにするとかの工夫は欲しかったが、悪くはない。
そんな彼らの動きを、警察は当然許さない。戸田恵梨香演じる女刑事を中心に彼らの正体を探り、行方を追おうとする。それ自体は当然なのだが、この女刑事が主人公らを異常に敵視する理由がよく分からなかった。なんでも社会のせいにするな、甘えるなということなのかもしれないが、社会正義のつもりでやっている彼らにそれはピンと来ない。
彼女はその後の犯人の足取りを追う中で、社会の底辺にいる人たちの現実を目の当たりにして動揺していたが、そういう人たちと接触する機会が多いはずの警察がその認識?と脱力した。ついでに言うと警察らしくない服装も、彼女のリアリティを失わせている。
この他にも、警察の事件関係者の洗い出しが無能レベルだったり、国会議員が民間企業の製品発表会に参加するなど、リアリティに欠ける描写が多いのは気になる。
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先の読めない展開で退屈することなく見ることができるが、それぞれのエピソードがうまく絡み合っていかないちぐはぐさに、もどかしさを感じる。一番の問題は、警察は必死になっているのに、主人公らが彼らを相手にしていないアンバランスな構図だろう。両者の対決ではなく、警察の片想いみたいになっている。主人公らが警察を挑発するような言動を取っていれば印象は違ったかもしれない。
また、犯人らのバックグラウンドを描くことで、松本清張もののように社会の闇を浮き彫りにしようとする意図が感じられる。社会問題を反映させようとするのは評価したいが、ちゃんと描き切れていない印象だ。ラストもそんな終わり方で良いのかと、消化不良感がある。
10年前の作品だが、この頃から社会はずいぶんと変わってしまった。社会で苦しんでいる人たちに手を差し伸べず、「自己責任」だと突き放していた人たちも苦しくなって、外国人のせいだと言い始めた。また不祥事で批判されている人たちの背後には、陰謀や漫画のような物語があると思い込み、熱心に応援することで日々の苦しさを慰めようとしている。そして貧しさから抜け出すためにやるべきことからは目を逸らし続ける。貧すれば鈍するとはまさにこのことだなと日々痛感する。
スタッフ/キャスト
監督
脚本 林民夫
原作 予告犯 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
出演 生田斗真/戸田恵梨香/鈴木亮平/濱田岳/荒川良々/坂口健太郎/福山康平/宅間孝行/窪田正孝/小松菜奈/仲野茂/細田善彦/田中圭/滝藤賢一/本田博太郎/小日向文世/野間口徹/中村ゆうじ/ブラザートム/菜々緒/名高達男/仁科貴