★★★☆☆
あらすじ
消えた友人を探しにインドにやってきた男。イタリア文学。
感想
インドに渡り友人を探す男が各地で様々な人々と出会い、言葉を交わす。「夜想曲」というタイトル通り、どのエピソードもどこか夢の中のように曖昧でぼんやりとしたものばかりだ。どこか非現実的な印象を受ける物語が続く。
だがこの小説の主人公のように、どこか一か所に滞在するのではなく、宿から宿へ移っていくような、「旅行」よりも「旅」という言葉が似合いそうな行動をすると、後で思い返した時、記憶にある出来事が現実に起きた事なのか、それとも夢だったのか分からなくなってしまうことがある。旅は、時間と共に場所も変わり続け、基準となる確かなものがほぼないので、記憶に定着しにくいからなのかもしれない。
いくつかのエピソードの中では、バスの待合所で不思議な兄弟に占いをしてもらう場面が印象に残った。不気味でもありミステリアスでもあるシチュエーションで交わされる会話は意味深で、とてもインドぽかった。どんなことでもあり得そうと思わせるのがインドの凄みだ。
探している友人に関する情報は不確かなものばかりが集まり、この先どうなっていくのだろうと思っていたのだが、終盤で物語の方向性が一気に変わる展開となって面白かった。ただ色々な解釈が出来そうで、その余白の大きさが面白いと思えるかどうか。再度読み返したらまた違った見方が出来そうでもある。
著者
アントニオ・タブッキ
登場する作品
Les Travailleurs de la mer (Annoté): Trois parties (French Edition)
「インド人の言語と叡智について(Ueber Die Sprache Und Weisheit Der Indier: Ein Beitrag Zur Begrundung Der Alterthumskunde)」
「Passos da Cruz(十字架の道)」 フェルナンド・ペソア
「降誕祭」 フェルナンド・ペソア
関連する作品
映画化作品