★★★☆☆
あらすじ
事故で亡くなった姉に見守られる妹。新尾道三部作。155分。
感想
主人公の姉が事故で亡くなるシーンはなかなか強烈だった。じわじわとトラックが迫って来て、やがては圧死することが分かっているのどうすることも出来ない状態。一番嫌な死に方かもしれない。どうせ死ぬならひと思いに即死させて欲しいものだが、死期を悟った姉がそんな状態でも妹を気にかけているのもすごかった。こういう死に方は嫌だが、最後の別れがちゃんとできるのがメリットと言えばメリットなのかもしれない。
その後、しっかり者だった姉は頼りない妹の前に現れては、彼女をサポートするようになる。姉が死後に最初に現れたのは、主人公が夜道で変質者に襲われた時だ。無事難を逃れることは出来たのだが、本人を含めて家族や周囲のリアクションが薄かったのがとても気になった。父親などは一応は心配しながらも「お前もそういう(襲われる)歳になったんだな」とかのん気なことを言っていてびっくりした。あまりにも危機感がなさ過ぎだ。
この映画ではその他にも同級生からの嫌がらせなど、他人からの悪意がたびたび襲い掛かってくる。また母親の病気や父親の左遷に不倫、知り合いの会社倒産や自殺未遂など、様々な厳しい現実も描かれる。そしてそんなシーンではきっと雨が降っていて、不穏な気持ちに襲われる。姉に守られ無邪気なままでいた少女が、そういった現実を受け入れながらやがて大人になっていく。
主人公と姉の関係を見ていたら、姉は主人公にとっての第三者的視線の役割を果たしているように思えてきた。人は自分を客観視することで冷静に判断ができるようになる。くよくよと思い悩んでいた事も、俯瞰で見ることによって些細な問題でしかないことに気づくこともある。そんな時、具体的な誰かを思い浮かべるとやりやすい。あの人ならどうするだろう、どんなアドバイスをくれるだろうと考えるだけで、グッと視野が広がる。誰を設定するかは人それぞれで、人によってそれは神だったり、偉人だったり、ライバルだったりする。主人公にとっては、それが姉だった。
主人公が大人になっていく過程が描かれて行くのだが、中学生から高校生までと結構長いスパンが取られており、しかも大きな物語と言うよりはいくつかのエピソードが連なっているだけなので、上映時間の長さが多少しんどかった。それから主演の石田ひかりは、頼りなさを表現するための眠たげな覇気のない序盤の演技が少し辛かったが、主人公の成長と共にそれはなくなり、まともな見られる演技になっていった。
スタッフ/キャスト
監督/編集
脚本 桂千穂
原作 ふたり(新潮文庫)
出演 石田ひかり/中嶋朋子/富司純子/岸部一徳/尾美としのり/柴山智加/中江有里/島崎和歌子/ベンガル/入江若葉/吉行和子/奈美悦子/林泰文/竹中直人/増田惠子/藤田弓子
音楽 久石譲
撮影 長野重一
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