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「ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画」 2014

ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 環境問題を真剣に憂う男は、自然に悪影響を与えているダムの爆破を仲間と共に企てる。

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 原題は「Night Moves」。

 

感想

 タイトルから派手なアクションやパニックシーンが繰り広げられるのかと思ったのだが、実際はとても静かな物語だった。ダムの爆破シーンすら見せてくれない。その代わりに時間と共に変化する主人公らの内面が丁寧に描かれていく。

 

 邦題だとネタバレしてしまっているが、序盤は主人公らが何をしようとしているのかがよく分からないくらい言葉少なく、説明も少なく進行する。やがてテロ活動の準備をしているのだなというのが分かって来るのだが、彼らが気分が高揚するわけでもなく、ただ淡々としているのが印象的だった。すでに覚悟が決まっているからなのか、内心ビビっているからなのか、あるいはその両方なのか。ダム爆破が成功した時でさえ大喜びすることなく、淡白な反応しか見せなかった。

 

 

 ところでこの犯行中にいくつか想定外の出来事が起きるのだが、その中で立ち往生する故障車に行く手を邪魔されるというのがあった。このシーンで故障者のドライバーがわずか10分ばかりでさっさと車を直して行ってしまったのには驚いた。どんなトラブルなのかは分からなかったが、ジャッキやらを使っていたのにそんな短い時間で直してしまうとは凄腕すぎる。本編とは関係ない所で感心してしまった。

 

 爆破成功後の主人公らは素知らぬ顔でいつもの生活に戻ろうとする。だが思っていたのとは違う世間の反応に戸惑い、また予期していなかった被害が出たことにも後ろめたさを感じて、彼らの確固としていた信念に揺らぎが生じ始めたことを窺わせている。さらに、逮捕を恐れて周囲の状況に怯えるようになり、精神的にも少しずつ追い込まれていく。

 

 まるで犯罪者の心理状態を追体験させるような映画だ。たとえバレなかったとしても、逮捕されることを恐れて一生ビクビクして生きることになる。いつも人の目を気にしなければいけない人生はかなりしんどいはずだ。だけどやってしまったことは取り返しがつかない。後悔したところで後の祭りだ。

 

 映画序盤に、犯行準備のために行ったホームセンターで、仲間の女性が逆光でシルエットしか見えない店員に話しかけられるシーンがあった。相手の顔や表情がまったく見えず、何となく不安を覚える印象的なシーンだったが、あれはやましいことがあると他人が全部こんな風に見えることになるよと示唆していたのかもしれない。悪事がバレるのではと常に疑心暗鬼な気持ちで他人と付き合っていくことになる。

 

 これから何か悪いことをしでかそうとしている人に見せたら、改心してくれそうでいいかもしれない。こんな気持ちで生きるのなんて御免だという気持ちにしてくれる。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ケリー・ライヒャルト

 

製作総指揮 サエロム・キム/ロウレンソ・サンターナ/アレハンドロ・デ・レオン/トッド・ヘインズ/ラリー・フェセンデン

 

出演 ジェシー・アイゼンバーグ/ダコタ・ファニング/ピーター・サースガード/アリア・ショウカット/キャサリン・ウォーターストン/ジェームズ・レグロス 

 

ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画 - Wikipedia

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