★★★★☆
あらすじ
太平洋戦争末期、敗戦を受け入れ玉音放送を行うまでの日本政府中枢の24時間が描かれる。157分。
感想
終戦間際、日本の中枢で起きていたことが描かれていく。しかし、それまで勝手にやりたい放題やって来たくせに、いざ敗戦を受け入れるかどうかの決断を迫られると何も出来ず、天皇に泣きついてしまう政府要人たちの無責任ぶりには呆れてしまった。
そしてご聖断が下された時には泣き崩れる者がいたのも腹立たしい。「よくぞ苦渋の決断をしてくださった」と感涙したということなのかもしれないが、いやいやそれは本来お前らがするべき仕事だから、と苛立ってしまった。肝心な時に責任のある決断が出来ず、ただ泣くだけのリーダーなんて無能以外の何者でもない。これで日本のリーダーが務まるのなら楽なものだ。
敗戦を受け入れようとする政府の動向とともに、それに反発し、クーデターを起こしてでも断固戦争を続行しようとする若手エリート将校たちの様子も描かれる。敵の本土上陸が目前に迫る中、それでもまだ勝てるかもと思っている彼らの能天気ぶりには呆れてしまう。しかも自分たちの思い通りにならなかったら、怒って上官を殺し、天皇にまで銃を向けてしまう傍若無人ぶりだ。無茶苦茶すぎて思わず苦笑してしまった。政府要人たちもそうだが、彼らの幼稚な振る舞いは何なのか。駄々をこねる子供と何も変わらない。
彼らももう負けることは分かっていて、それでもやるだけやって美しく死にたいと考えているだけだったのかもしれない。そういう気持ちは分からないでもないが、それなら自分たちだけで勝手にやってくれよと思ってしまう。なぜ国民全員を道連れにしようとするのか。
彼らの様子を見ていると、皆はいつも自分たちと同じことを考えているはずだと思い込んでいる節がある。「みんな一緒」なんてあまりにも非現実的でお花畑すぎるのだが、彼らがすぐに「非国民」という言葉を口にしてしまいがちなのは、そういう考え方をしているからかもしれない。反論されると驚いてパニックに陥り、信じられずについ口走ってしまう。なにかと他人の自由を制限したがるのも、その発想から来ているような気がする。
その他にも軍の連絡体制や指揮系統がぐちゃぐちゃで、簡単に上官が部下に騙されてしまうなど、組織として上手く機能していない様子も垣間見える。こんな残念な大日本帝国時代に憧れを抱いている人が現在も割といるらしいのが解せない。彼らの中ではどんなファンタジーが出来上がっているのだろうか。
見ていると国の中枢の人間たちのグダグダな言動にイライラばかりが募るのだが、映画としては面白く仕上がっている。タイトル通りにじりじりとした長い一日を感じさせつつ、2時間半を超える上映時間自体は長いとは感じさせない構成になっており、素直に感心してしまう。これでもまだ美化して描き過ぎな気がしないでもないが、臨場感があって堪能できた。
たくさん登場する役者陣の中では、クーデターの中心人物を演じた黒沢年男のギラギラとした純粋まっすぐぶりと、横浜から有志軍を率いて参戦する男を演じた天本英世の狂気ぶりがとてもインパクトがあって印象に残った。
スタッフ/キャスト
監督 岡本喜八
脚本 橋本忍
製作 藤本真澄/田中友幸
出演
山村聡/志村喬/宮口精二/加藤武/北村和夫/武内亨/神山繁/浜村純/高橋悦史/中丸忠雄/黒沢年男/島田正吾/佐藤允/伊藤雄之助/天本英世/井川比佐志/堺左千夫/中村伸郎/北竜二/小林桂樹/児玉清/加東大介/加山雄三/新珠三千代/三井弘次/松本幸四郎(八代目)/(声)仲代達矢
登場する人物
阿南惟幾/鈴木貫太郎/米内光政/椎崎二郎/畑中健二
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