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「春婦傳」 1965

春婦傳

★★★☆☆

 

あらすじ

 第二次大戦下の中国。天津から僻地の慰安所に流れてきた売春婦は、横暴な副官への面当てに、若くて真面目な当番兵を誘惑しようとする。

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 川地民夫、野川由美子ら出演。田村泰次郎原作、鈴木清順監督。96分。

 

感想

 天津で恋人に捨てられ、戦線の野営地にやってきた売春婦が主人公だ。酷い目に遭ったので、もっと酷い目に遭ってやると自分を追い込む主人公だが、自暴自棄になっているというよりも、さらに闘志を燃やしている様子で、敢えて技を受けるプロレスラーの受けの美学みたいになっている。演じる野川由美子が、そんな女性にふさわしい劇画調の力強いたたずまいをしている。

 

 主人公は副官に横暴に扱われ、その意趣返しに彼に忠実な若い当番兵を誘惑しようとする。彼女は反骨精神が旺盛だ。誰にも屈しようとしない。しかし、いつの間にか当番兵に惚れてしまい、結局は恋仲となるのだが、戦時下という非日常の中で、哀しき運命をたどることになる。

 

 

 恋仲となった当番兵は、不屈な主人公とは対照的に、真面目で従順だ。大日本帝国の軍人として恥ずかしくない行動をし、天皇のために死ぬのだと、本気で思い込んでいる。当時の典型的な日本人だろう。主人公の影響で多少の心境の変化はあったが、最後までそのマインドコントロールからは完全に抜け出せなかった。それが二人に悲劇を招いたと言える。

 

 男を洗脳し、翻弄した日本軍の欺瞞は、あちこちで浮き彫りになっている。違反者には死に場所を与えてやると激戦地に送り、捕虜となった者には生き恥をさらすなと死を迫り、軍法会議にかけられそうな者がいると、隊の評判に傷が付くからと殺して戦死者扱いにしようとする。特攻隊などもあり、日本人は「死にたがる国民性」と言われることがあるが、そうではなくて、「死なせたがる国民性」なのでは?と思ってしまった。

 

 また、捕虜の件などは、もっともらしいことを言っているが、単に迷惑をかけられたくない利己的で冷淡な国民性が表れているだけのようにも感じられる。それを言っていた張本人が死なずに天寿を全うしたという話はよく聞く。それが日本人の本質だとするなら、最近の弱者切り捨てや排外主義的な風潮もすんなりと理解できてしまう。

「万博工事費未払い」下請け業者が悲痛の叫び…吉村知事は「切り捨て」か (2025年12月5日掲載) - ライブドアニュース

 

 売春婦たちの悲哀や軍隊の理不尽さなど、痛烈なメッセージ性が散りばめられた中で展開する悲恋の物語だ。砲弾飛び交う戦場を着物で駆け抜ける主人公の姿は、彼女の不屈の精神が表れているようで、鮮烈な印象を残す。

 

 その他、手りゅう弾を盗む場面でグッとカメラが回り込むように主人公を撮影するアナログなバレット・タイム的な映像があったりして、鈴木清順監督らしい独特で魅力ある映像世界が見られるのも見どころだ。

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スタッフ/キャスト

監督 鈴木清順

 

脚本 高岩肇

 

原作 田村泰次郎『春婦伝』春陽文庫 初版

 

出演 川地民夫/野川由美子/玉川伊佐男/小沢昭一/初井言栄/高品格/松尾嘉代/野呂圭介/長弘

 

音楽 山本直純

 

春婦傳

春婦傳

  • 川地民夫
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春婦伝 - Wikipedia

 

 

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