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「東京流れ者」 1966

東京流れ者

★★★☆☆

 

あらすじ

 組を解散してカタギの組織になるも、対立していた暴力団から執拗な攻撃を受けて怒りが募る元組員。

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感想

 組を解散してカタギになった組織の、元組員の若い男が主人公だ。なぜ組織がヤクザを廃業したのかは不明だが、対立していた暴力団がまともにやっていこうとしている彼らを執拗に攻撃するのは、いかにもやくざの世界らしい厭らしさだった。昨日まで同じ穴のムジナだったくせに、突然しれっと真面目な顔をするのを許さない。そして反撃してこないのをいいことに、抜け目なくその足をすくおうとする。

 

 親分のためにもそんな嫌がらせに必死に耐えていた主人公だったが、窮地に陥った親分を庇って泥をかぶり、迷惑が掛からぬよう放浪の旅に出る。東北や九州で現地の争いに巻き込まれながらも、口笛を吹き、歌を口ずさみながらニヒルに切り抜けていく主人公の姿はカッコいい。ただし、何がどうして強いのかは全く分からないのだが。そんな細かいことは気にしちゃいけない空気がある。

 

 

 何度も繰り返し同じ歌が流れるので、自然と歌も覚えてしまう。当時の観客がこの歌を口ずさみながら、主人公になり切って映画館をあとにする姿が目に浮かぶようだ。

 

 主人公が歌いながら敵を待ち受けるスクラップ工場のシーンは、まるでミュージカルのようで面白かった。この他にも冒頭のモノクロシーンではなぜか全員が顔を黒?塗りしていたり、突然あからさまなドライヤーの宣伝が入ったりと、鈴木清順監督らしい奇妙な演出が随所に見られて独特の雰囲気を醸し出していた。

 

 歌手のヒロインが働くクラブも、その設定だから辛うじて体裁を保ってはいるが、それがなければただのワケの分からぬシュールな場所でしかなく、アヴァンギャルドな映像となっていた。

 

 主人公と親分の熱い絆を見せておきながら、最終的には裏切りで終わってしまう物語だ。そんな中途半端なことをされるくらいなら、最初から冷たく裏切ってくれた方がまだましだと思ってしまうが、切羽詰まった時にその人の本当の姿が現れてしまうということだろう。昭和の男はそれらを黙って飲み込み、女を振り切り去っていく。

 

スタッフ/キャスト

監督 鈴木清順

 

脚本 川内康範

 

出演 渡哲也/松原智恵子/川地民夫/二谷英明/郷鍈治/北竜二/長弘

 

東京流れ者 - Wikipedia

 

 

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