★★★☆☆
あらすじ
幼少期に自動車事故で頭にチタンを埋め込まれた女は、車に異常な性的興奮を抱くようになる。
カンヌ国際映画祭パルム・ドール。108分。
感想
幼少期に頭にチタンを埋め込まれた女が主人公だ。ダンサーとなった彼女は、連続殺人鬼になっている。そして、ある時、車と性的関係を持って妊娠する。のっけから理解が追い付かない展開だ。困惑しかないが、元々病んでいて、さらに埋め込まれたチタンが、車に共鳴したということか。
あまりにもぶっ飛んだ設定で、正直なところあまりよく分かっていなかったが、どうやら彼女の体から流れ出ていた黒い液体はオイルで、車の体液を表していたようだ。よく考えると、車のエンジン回りを舐めるようにじっくりと見せ、オイルが垂れる様子を映し出していたオープニングの映像は、これらを暗示していた。
連続殺人犯として指名手配され、追いつめられた主人公は、何年も前に行方不明となっていた少年と自分がよく似ていることに気付き、彼になりすましてその父親と暮らし始める。主人公は女だし、妊娠しているしでバレないわけはないのだが、なぜかその父親は受け入れる。突然息子が消え、きっとたくさんの無念と後悔を抱えていた彼は、これも何かの縁だと、嘘を承知で罪滅ぼしをしようとしたのだろう。
主人公は訝しく思いながらも、次第に男が注ぐ父親としての愛に心を許すようになっていく。しかし、主人公の出産の時は近づいてくる。もはやわけの分からない展開だが、その異様さに引き込まれてしまう。
主人公が堕胎を試みたり、お腹を掻きむしって裂けたりと、とにかく痛くてグロいシーンが多いが、コミカルなシーンもある。主人公が知り合った女の家で殺人を行い、それを目撃した同居人も始末しようとしていたら、次々と他の同居人が現れて、「この家には何人いるの?」と思わず聞いてしまったシーンは可笑しかった。
一体これは何なのだ?と戸惑ってしまうような、異様な迫力に満ちたクレイジーな映画だ。主人公を受け入れた男は、老いを気にしていたが、耐久性の強いチタンは永遠なるものを象徴しているのだろう。人間は永遠に生き続けることはできないが、子を成すことで永遠に命をつないでいくことが出来る。また、拒絶反応を示さず身体と調和するチタンは、たとえ他人同士であろうとも強い絆を結べることも示唆している。
フェチズムが過ぎる、と思わなくもないが、それでもなんとなく伝わるのだから、これでいいのだろう。強烈なインパクトに打ちのめされる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ジュリア・デュクルノー
出演 ヴァンサン・ランドン/アガト・ルセル/ギャランス・マリリエ/ライス・サラーマ/ベルトラン・ボネロ
