★★★☆☆
あらすじ
夫婦関係が倦怠期を迎えていた男は、交通事故を起こしてしまうが、それがきっかけで奇妙な性癖に目覚めてしまう。
ジェームズ・スペイダー、ホリー・ハンター、ロザンナ・アークエットら出演。デヴィッド・クローネンバーグ監督、J・G・バラード原作。100分。
感想
冒頭からいきなり飛行場で絡み合う男女のシーンで戸惑ってしまったが、全編がそんな感じの映画だった。交通事故に性的興奮を覚える人たちの物語だ。
主人公は自動車事故の相手によって、その世界に引き込まれていく。同好の仲間も紹介されるようになるが、有名人の交通事故を再現して興奮する人たちのシーンは、なかなかの異様さだった。本当に車を正面衝突させ、ドライバーも意識朦朧となっているのだが、それが良いらしい。ただ、死の恐怖を味わう時はもっとも生を実感する時でもあるので、動物的本能が呼び覚まされて気持ちが高まるのは分からないでもない。
やがて主人公の妻も加わり、夫婦でこの世界にのめり込んでいく。彼らは倦怠期ではあるが不仲ではなく、そして性欲だけはたっぷりあったからこうなったのだろう。倦怠期を乗り越えるために敢えて突き進んでいった感もある。夫婦だけでなく仲間も入り乱れ、様々な組み合わせで絡み合っていく。
彼らの言動を見ていると、自動車事故の様々な側面に興奮していることに気付く。血まみれで死にそうになっていることにだけではなく、ぐちゃぐちゃになった車やあり得ない動きをする身体など、グッとくるところは色々あるようだ。単純に車のフォルムや体の傷跡、有名人の悲劇などがたまらないというのもある。
交通事故にはフェチの要素がたくさん詰まっているということなのだろう。鉄道オタクが乗り鉄、撮り鉄などに分かれるように、よく見れば彼らにも派閥があるのかもしれない。
モザイクたっぷりで描かれる、エスカレートしていく性的倒錯者たちの物語だ(無修正版ではなく通常版で鑑賞)。最初は「彼らの気持ちも分からなくはない」などと、したり顔で見ていたが、主人公とスタントマンの絡みやラストの主人公夫婦の行為など、異常さが増す終盤の展開に、「やっぱり分からん!」となる。
しかしこんな訳の分からない世界を安全な場所から見ることが出来るのもまた映画の醍醐味だ。世の中にはいろんな人がいるのだと、世界の広さを教えてくれる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 デヴィッド・クローネンバーグ
原作 クラッシュ (創元SF文庫) (創元SF文庫 ハ 2-11)
出演 ジェームズ・スペイダー/デボラ・カーラ・アンガー/ホリー・ハンター/イライアス・コティーズ/ロザンナ・アークエット
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