★★★☆☆
あらすじ
多重人格でもう一人の自分に唆され、2年ぶりに人を殺してしまった殺人中毒の男は、目撃者に次の犯行時に同行させろと脅される。
感想
主演がケビン・コスナーで、その他にデミ・ムーアやウィリアム・ハートが出演するという80年代か?と思ってしまうようなキャスト陣だ。だが皆現役感のある演技をちゃんと見せている。
主人公は多重人格で殺人中毒の男だ。我慢していた殺人を久しぶりにやってしまうが、事件を目撃されて脅されてしまう。だがその脅迫の内容が、次にやるときは間近で見学させろ、というもので、目撃者も殺人に興味のある異常者だった。ここまでですでにかなりの情報量だ。
だがこれにプラスして、サイドストーリーもいくつか同時に進行する。主人公を追うデミ・ムーア演じる女刑事は離婚調停で揉めており、さらに彼女に恨みを持つ最近脱獄した別の殺人鬼に命を狙われている。それから大学を辞めたいと実家に戻ってきた娘は妊娠しており、さらには殺人鬼の父の血を継いだようで何か問題を起こしてきたらしい、と盛りだくさんだ。
これだけ題材がたくさんあれば、次から次へと何かが起こって飽きることなく見ていられるだろうと思うかもしれないが、中盤はビックリするくらい何も起きない。主人公は脅迫者を連れて街を漂い続けるだけだし、女刑事の離婚調停は平行線のままで、脱獄犯とは一瞬コンタクトがあっただけだ。娘に至っては匂わせのみで何も起きない。
それぞれの素材がまったく混ざり合っていなくて、これなら別々に食べた方が美味しくない?と思ってしまうほどだった。停滞感があってつまらない。
主人公のキャラクターもよく分からない。脅迫されているのに余裕綽々だし、人殺しはもうやめたいと言っているわりにはノリノリで次の作戦を考えている。だけど娘が自分の血を受け継いでしまったらしいことに泣き崩れたり、突然もう死ぬと決意したりする。
これらは多重人格ならではの描写なのかもしれないが、クールで完璧な殺人鬼なのか、己の性癖に苦悩する殺人鬼なのか、どっちの方向で主人公を見ればいいのか迷ってしまう。シリアスなのかコミカルなのかもどっちつかずで、足元がグラグラして視点が定まらない。
モヤモヤしたものを抱えながら見ていたのだが、終盤に同時進行していたエピソードたちが一気に混ざり合い、ようやく面白くなった。おかげで持ち直した感はあるが、それなら中盤からいい感じにかき混ぜ、同時進行の相乗効果のある物語にして欲しかった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ブルース・A・エバンス
製作/出演
出演 デミ・ムーア/デイン・クック/ウィリアム・ハート/マーグ・ヘルゲンバーガー/ダニエル・パナベイカー/ルーベン・サンティアゴ=ハドソン/リンゼイ・クローズ/ジェイソン・ルイス/レイコ・エイルスワース/マット・シュルツ