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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ナチュラル・ボーン・キラーズ」 1994

ナチュラル・ボーン・キラーズ

★★★★☆

 

あらすじ

 トラウマを抱えた男女が出会い、殺人を行いながら旅を続ける。

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 クエンティン・タランティーノ原案、オリバー・ストーン監督。ウディ・ハレルソン、ジュリエット・ルイス出演。118分。

 

感想

 各地で人を殺しながら旅を続けるカップルの物語だ。敢えてライトな感じに描いているが、彼らがやっていることはかなりひどい。特にコメディードラマ風になっている女の両親を殺すシーンは、リアルに描いたら相当残虐になるはずだ。コメディーぽく描くのは過激さを薄めるためもあるのだろうが、これらを面白い物語としてエンタメ的に消費してしまう世間を暗示しているようでもある。

 

 次々と音楽が流れ、アニメやCM、過去のニュース映像などを大量にコラージュしながら進行する演出は少々うるさいが、これもまた情報が氾濫する社会を表しているのだろう。この映画は独善的で身勝手な殺人者でしかない主人公らを、スターのように祭り上げる無責任な世の中を描いた物語とも言える。

 

 それを代表するのがロバート・ダウニー・Jr演じるテレビリポーターだろう。善悪は無視して、視聴率のために主人公らを利用しようとする。金や名声のためなら手段を選ばない、恥知らずが跋扈する世の中の欺瞞を浮き彫りにしている。彼が何かと正義に訴えようとするのも皮肉だ。もちろん彼にバカにされながら、もっと刺激を求めてしまう視聴者にも当然問題がある。

 

 

 しかしこの時代でこの有り様なのだから、誰でも情報を発信できるようになった現代の乱れっぷりは自然な流れだなと妙に納得してしまった。刺激を求める人々は、一定の規範が求められるオールドメディアでは飽き足らず、有象無象がうごめく何でもありのネットの世界で欲望を満たそうとしている。

 

 主人公らは自分を持て囃す世間に気分を良くして、得意になって自分たちの主張を話している。彼らの言い分には頷いてしまう部分があるし、そもそも彼らの過去には同情すべき部分もある。だから彼らを悲しき殺人鬼として描きたいのか、おかしな世の中が生んだアイドルとして描きたいのか、どっちつかずの印象を受けてしまった。

 

 もしかしたら、世の中は当人たちの事情にはお構いなく、勝手に物語をでっち上げて気持ちよくなっているだけ、と言いたいのかもしれないが。他にもトミー・リー・ジョーンズが浮き気味だったりと色々気になる点はあるが、それでも殺人鬼カップルのロマンチックな物語として楽しめた。

 

 監督らにより改変されてメッセージ性の強い映画となったが、クエンティン・タランティーノが書いたオリジナルの脚本でそのまま撮っていたらどんな映画になったのだろうかと夢想してしまう。これも悪くないが、そっちも見てみたかった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 オリバー・ストーン

 

脚本 デヴィッド・ヴェロズ/リチャード・ルトウスキー

 

原案

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出演 ウディ・ハレルソン/ジュリエット・ルイス/ロバート・ダウニー・Jr/トミー・リー・ジョーンズ/トム・サイズモア/ロドニー・デンジャーフィールド/エディ・マックラーグ/デイル・ダイ/バルサザール・ゲティ/ジョー・グリファシ/オーラン・ジョーンズ

 

音楽 ブレント・ルイス

 

ナチュラル・ボーン・キラーズ - Wikipedia

 

 

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