★★★★☆
あらすじ
かつての栄光から遠ざかり、今はバイトをしながらトレーラーハウスに住む年老いたレスラー。
ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞。
感想
試合前の対戦相手との打ち合わせや仕込みなどが描かれているが、プロレスファンはどんな気持ちで見るのだろう。だがそれが生々しくプロレスの世界を描くことを成功させている。全部見せちゃうよとガチンコ感がある。
決して多くはない観客の前で、かなりショッキングな流血沙汰のプロレスをするとか、こういうのは本当に好きでないとできない職業だ。プロレスの魅力というのはなんなのだろう。格闘技のように最強を競うものではないし、きっとエンターテイメントなのだろう。映画のヒーローのように、悪役に痛めつけられながらも最後は相手を倒して観客を沸かす、というショーだ。客を喜ばせることが喜びというのは、ミッキー・ローク演じる主人公がアルバイトで客をあしらう時にもそれがよく出ていた。
こういう映画は、引退の潮時が近づいていることを知ったレスラーが、疎遠だった娘と親子の絆を取り戻し、支えてくれる彼女も見つかり、レスラーとして最後の花を咲かせる、ということになりそうなものなのに、そうはならないのがいい。
何をやっても全然ダメだったが、プロレスだけが自分を輝かせてくれる、これこそが自分の居場所だ、と主人公は確信している。ためらっていたマリサ・トメイ演じる女が彼のもとに飛び込もうとしているのに、主人公はもうプロレスの事で頭がいっぱいで、もう彼女の事なんて眼中になかった。このプロレス馬鹿ぶりが最高によかった。
それからマリサ・トメイが違う意味で気持ちいいぐらい体を張っていて、それもまた別の意味でよかった。
スタッフ/キャスト
監督/製作 ダーレン・アロノフスキー
出演 ミッキー・ローク/マリサ・トメイ/エヴァン・レイチェル・ウッド/マーク・マーゴリス/ロン・キリングス/ネクロ・ブッチャー
音楽 クリント・マンセル