★★★☆☆
あらすじ
1988年7月15日、大学卒業の日に初めて言葉を交わした男女は、互いに惹かれ合いながらも友人として付き合うようになる。
アン・ハサウェイ、ジム・スタージェスら出演。小説原作のイギリス映画。108分。
感想
1988年から2011年まで、毎年の7月15日だけを描いていくユニークなスタイルの映画だ。一年の中でなぜこの日なのかと気になるが、二人が記憶しやすい「聖スウィザンの日」であると共に、欧米では転機になりやすい期末の時期だからなのだろう。日本だと卒業式があったり引っ越しが多くなる3月のある一日を選ぶようなものだ。
大学の卒業式で初めて言葉を交わした主人公と男は、そのままベッドインしそうになるもタイミングを逸し、そこから友人としての付き合いが始まる。一年後には引っ越しを手伝い、二年後には長距離電話で近況を報告し合い、それぞれの環境が変わっても関係は続いていく。
序盤は一年一年が早く過ぎ、このペースだとすぐに終わってしまうぞと余計な心配をしてしまったが、時折じっくりと描かれる年が出てきて、緩急がつくようになった。そして毎年のある一日を見るだけでも、案外と二人の状況の変化は把握できてしまうものだなと感心する。勿論そうなるような演出をしているからなのだが。
主人公ら二人の友情とすれ違う恋愛感情が描かれていくが、それ以外の変化にも人生が感じられて味わい深い。服装や髪型、仕事や住む場所が変わり、身近な人が死去してある時からいなくなったりする。
そして気弱で優しかった当時主人公の付き合っていた恋人が、いつの間にかやさぐれてしまっていたのを見ると、結婚や転職といった分かりやすい転機だけでなく、日々の積み重ねも少しずつ人間を変えていくのだなとその重みを感じる。歳を重ねれば重ねるほど、その人の生き様が表れるようになる。
主人公と男の関係は、「友情」だと言ってはいるが、実際は恋愛の初期段階で足踏みしているだけに過ぎない。だから正直なところ、早く付き合っちゃえばいいのに、と思うだけだ。最初につまずいた言い訳として、互いに呪いをかけてしまったばかりになかなかその先に進めない。
そのせいでそれぞれ別々に恋人を作り、片方は結婚までしてしまった。そんな長い寄り道の末、ついに結ばれた二人だが、その瞬間を案外あっさりと描いたのは意外だった。それでいいのかと困惑する。
しかしそれでハッピーエンドというわけではなく、まだ続きがあった。人生は何があるのか分からない。最後に男が語りかける相手が、主人公との子どもではなく、前妻との間の子どもなのは深みがある。寄り道のように思えた過去も決して無意味なものではない。それがあるから今がある。
人生の重みを感じさせる面白い形式の恋愛映画だ。だが、このアイデアなら出来ることはもっとあったはず、と物足りなさを感じてしまう。メインの恋愛部分もそれ以外の部分も濃厚さが足りなかった。
スタッフ/キャスト
監督 ロネ・シェルフィグ
脚本 デヴィッド・ニコルズ
出演 アン・ハサウェイ/ジム・スタージェス/パトリシア・クラークソン/ロモーラ・ガライ/レイフ・スポール/ケン・ストット/ジョディ・ウィッテカー/トビー・レグボ/エミリア・ジョーンズ
音楽 レイチェル・ポートマン


