★★★★☆
あらすじ
ヒーローとしての責務を忘れ、ひとりの高校生として学校のヨーロッパ研修旅行を楽しもうとするスパイダーマンだが、結局戦いに巻き込まれていく。「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」シリーズ 第23作目。
感想
スパイダーマンとしての責務と、一高校生として人生を楽しみたい願望との板挟みになる主人公の姿が描かれる。これは、勉強はしなければいけないが、遊びたいし恋人も欲しいし、いろいろ青春したいと考えている普通の高校生のジレンマとさほど変わらず、共感を得やすい構図になっているのが上手い。
しかもアイアンマン亡き後の世界をどうするのか?と世間の注目を集めているプレッシャーもある。責任から逃れ、目を背けたくなる気持ちはよく理解できる。ただ自分はこのMCUシリーズをちゃんと追っていないので、このあたりの彼らを取り巻く状況はしっかりとは分からなかった。それでもなんとなく分かるようになっているのは流石だが、今回はシリーズを見ていないと分からないことが多めだったように感じた。
今回のヴィラン(敵役)は、ドローンとVRを駆使して世界を騙し、ヒーローの座につこうとする男だ。設定を考え、敵を生み出し、そして勇ましく戦った演技をして称賛を得ようとする姿は、ヒーロー映画の製作で行われていることそのままである。ヒーロー映画の中でヒーロー映画の仕組みを披露して、おまえら簡単に騙されるなよ、と警告しているようにも感じられた。
これは現実世界にもよくあることで、物知りでなくても物知り風にものを言えば世間は賢いと思うし、根拠がなくても偉そうにしていれば勝手に世間は偉いと思ってしまう。世間はただ従うだけでいい救世主的な存在を常に渇望しているので、それらしき振りをする人間が現れるとコロッと騙されてしまう。ネットでもてはやされている有名人は大体そんな振る舞いをしている。世の中は案外チョロい。
ヴィラン役を演じるジェイク・ジレンホールは、存在感がすごくて、ヒーローとして最初に登場した時には普通にすっかり騙され期待してしまった。悪役だと分かった後もなんだかもったいないなと残念に思う気持ちが強い。昔はこういう映画は敬遠されがちだったが、最近ではいい役者たちがカジュアルに出演してくれるようになったのでいい時代になった。
スパイダーマンとのVRを駆使した戦いは、なにがなんだかわからなくなる不思議な感覚があって面白かった。シリアスになり過ぎないようにギャグを散りばめ、主人公の恋や友情を描いた青春映画のようなエピソードもあって、エンタメ作品として楽しめる内容となっている。
スタッフ/キャスト
監督 ジョン・ワッツ
出演 トム・ホランド/ゼンデイヤ/コビー・スマルダーズ/ジョン・ファヴロー/J・B・スムーヴ/ジェイコブ・バタロン/マーティン・スター/トニー・レヴォロリ/マリサ・トメイ/ジェイク・ジレンホール/アンガーリー・ライス/コビー・スマルダーズ/ヌーマン・アチャル/クレア・ラッシュブルック/トニ・ガーン/イェルン・ファン・コーニンスブルッヘ/J・K・シモンズ/*ベン・メンデルソーン
*クレジットなし
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム - Wikipedia
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