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「おみおくりの作法」 2013

おみおくりの作法(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 孤独死した人物の葬儀を執り行う民生係の男は、人員整理によりリストラされることになり、最後の仕事に取り掛かる。

 

感想

 実際は、役所は身寄りのない死者を丁重に扱いましたよ、という体をなす程度の仕事をすればいいのだろうが、生真面目な主人公はそれができない。死者の身寄りなどがいないか調査し、いれば連絡を取り葬儀への参加を促し、いなければ自分ひとりで葬儀に参列するという丁寧な仕事をする。結局それが仇となり、主人公はリストラされてしまう。

 

 それが理由でリストラされたのに、自分の将来よりも担当している仕事のほうが気になってしまう主人公。逆に見ているこちらが、この仕事を長年やってきた中年の男が就ける仕事とは何があるのだろうかと心配してしまった。

 

 

 ただ、丁寧な仕事をする主人公目線で見ているので無慈悲な役所に憤りを覚えるが、冷静に考えると、やろうと思えば効率的に処理できる仕事にたくさんの時間と税金をかけているわけで、孤独死とは無関係な市民であれば文句を言っても仕方がないかな、という気もする。

 

 そもそもなかなか身寄りが見つからず、連絡してもなかなか人が集まろうとしない時点で、そういう人だったという事でもある。死者に対する寂しい反応を見ながら、自分が今死んだら、誰が葬式に参列するだろうかと考えてしまった。

 

 もの静かな主人公で、色が少ない無機質で白々しい雰囲気の映像。イギリスのどんよりとした気候も相まって、映画自体も生気が感じられない物静かなものとなっている。ただ所々にくすっと笑わせるシーンも忍ばせている。最後の仕事の日に、職場で身辺を整理したあと、窓際に椅子を運んでその上に乗り、ベルトを外して輪っかを作り始めたときには、えっ!となってしまったが、その後に笑った。

 

 映画は意外なラストが待ち受けている。彼の仕事によって大勢に送られる死者と誰にも見送られることなく埋葬される死者。いい対比となっている。そして、主人公の死者に対する誠実な仕事ぶりも報われる。いいラストではあるのだが、主人公の仕事が報われたことを知るのは40年後でも良かったような気がする。このよく出来たラストのために急がされてしまった印象。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 ウベルト・パゾリーニ

 

出演 エディ・マーサン/ジョアンヌ・フロガット/ポール・アンダーソン

 

おみおくりの作法(字幕版)

おみおくりの作法(字幕版)

 

おみおくりの作法 - Wikipedia 

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