★★★☆☆
あらすじ
ゼネコン企業との汚職事件をもみ消すために手を打つ公団幹部たち。しかし、何者かにより妨害工作を受けていることに気づく。
感想
結婚式のシーンから映画が始まる。そしてそこで主要な参列者達の立場や関係が記者たちに解説され、これから描かれる汚職事件の全容を理解する助けになっているのは上手い構成だ。
しかし、結婚式の席の設け方が面白かった。横長の一つのテーブルに新郎新婦をはじめ主な参列者たちが向かい合って座っており、その後ろに縦長のテーブルが並んでいる。昔は出席者が全員一つの同じテーブルに座っていたという事か。この映画の場合は、式の規模が大きく、参列者も多いため、複数のテーブルになったということなのだろう。
映画は、汚職事件に巻き込まれ命を失った父親のために、主人公が復讐を図る、というストーリー。序盤は主人公の思い通りに事が進む。仲間割れを起こすために敵の一人が着服をしたように思わせるシーンは、まるでちょっとしたコントのようだった。本人にとって絶体絶命の状況でも、関係のない第三者にとってはコミカルに見えてしまう。
この陥れられた男を演じる西村晃がいい演技。疑われた時の慌てぶりから、放心状態、そして精神的に参ってしまって疑心暗鬼と、全てでいい表情を見せている。中盤は彼がメインで活躍していたと言って良いかもしれない。
しかし、映画は痛快な復讐劇では終わらない。復讐を企てる主人公にも心の葛藤がある。そして相手は巨悪である。一人の男に簡単にやられてしまうはずがない。あらゆる手を使って打ち負かそうとする。
見ていると、60年前のこの映画と今の社会の状況は大して何も変わってないなと、暗澹たる気分になってくる。相変わらず組織のために自らを犠牲にする人はたくさんいて、今も巨悪はどこかで枕を高くしてぐっすり眠っている。もしかしたら、ちゃんと司法が裁いてくれると信じているこの映画の時代のほうがまだ幸せだったのかもしれない。そんな事も考えてしまいながら、どんよりとした重い気分になってしまう映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/編集
脚本 小国英雄/久板栄二郎/菊島隆三/橋本忍
出演
森雅之/香川京子/三橋達也/志村喬/西村晃/加藤武/藤原釜足/宮口精二/三井弘次/中村伸郎/南原宏治/菅井きん/田中邦衛/小玉清(児玉清)
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冒頭の結婚式シーンはこの映画から着想を得ている