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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「リメンバー・ミー」 2017

リメンバー・ミー (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 音楽を禁じられた一族にありながら、ミュージシャンになることを夢見る少年。

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感想

 「死者の日」に、ふとしたきっかけで死者の国を訪れることになった少年が、先祖の身に起きた事件の真相を知るという物語だ。

死者の日 (メキシコ) - Wikipedia

 

 まずは死者の国が華やかで楽しげなのがいい。そこに住む死者たちも、見た目はガイコツなのだが不気味さはなくポップで、ホラーな要素はほぼ無い。この映画の舞台となっているメキシコの元々の国民性というのもあるのだろうが、「死」というものをこんな風に描けるのはすごいなと感心する。日本でお盆やあの世がこんな風に描かれることはまずなくて、必ずどこかにおどろおどろしい雰囲気が漂ってしまう。

 

 そんな死者の国で主人公は、音楽のために家族を捨て、一族を音楽嫌いにさせた先祖を探す。主人公が当初思い描いていたような理想的な展開にはせず、一度裏切ってみせたところは心憎い演出だった。

 

 そのままだったらシンデレラストーリーのように出来過ぎで興醒めするところだったが、主人公はここで挫折を味わう。でも、先祖が酷い人間だった、ではなく、酷い人間は先祖じゃなかった、とするところが絶妙だ。個人的には前者を観てみたかった気もするが、それだとちょっと子供にはハードモードすぎるのだろう。

 

 主人公は、元の世界に戻るために奮闘する中で様々な体験をして学び、その経験を通して成長していく。そんな中、ひとりのキャラが口にした「死者は生きている人間たちに忘れられた時、本当の死を迎える」という言葉は印象的だった。確かに自分の事を思い出す人が誰もいなくなれば、もはや自分がこの世に存在していたことを証明する事はできなくなってしまう。

 

 さらに、自分を覚えていてくれた最後の人が死んでしまうと自分は消えてしまい、その人とは死者の国で会うことは出来ない、というのもよく出来たパラドックスだった。色々と深い。

 

 

 普通に楽しく少年の冒険物語を観ていたら、先祖を敬う事や家族を大切にする事など、人生で決して忘れてはいけない重要な事をいつの間にか学んでしまっている。ラストでは、死者の国に行く者と生者の国にやって来た者の両者が登場し、これまで人類が脈々と行ってきた命のリレーという壮大な営みに思わず想いを馳せてしまうようなエンディングだった。

 

 とてもよく出来ている。というか、ピクサーの映画はこの映画に限らず、非のうちどころがないくらいよく出来過ぎているものが多いので、なんだか逆に憎たらしくなってくるほどだ。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/編集 リー・アンクリッチ

 

製作総指揮 ジョン・ラセター

 

出演 アンソニー・ゴンザレス/ガエル・ガルシア・ベルナル/アラナ・ユーバック/ベンジャミン・ブラット/レニー・ヴィクター/アルフォンソ・アラウ/アナ・オフェリア・ムルギア/エドワード・ジェームズ・オルモス/チーチ・マリン/ジョン・ラッツェンバーガー/フランク・ウェルカー

 

リメンバー・ミー (字幕版)

リメンバー・ミー (字幕版)

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リメンバー・ミー (2017年の映画) - Wikipedia

 

 

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