★★★★☆
あらすじ
上位の組同士の思惑に振り回され、次第に溝が生まれていく義兄弟。
感想
冒頭から不穏な空気が漂っており、「仁義なき戦い」感は漂っている。東京スカパラダイスオーケストラによってアレンジされた「仁義なき戦いのテーマ」は少し軽快すぎるような気がするが。
渡辺謙演じる昔気質の武闘派やくざと高橋克典演じる現代風インテリやくざの弟分。主人公である弟分は、昔ながらの暴力が結局はやくざの世界を支配すると、兄貴分を慕い次期組長へ担ぎ上げようと画策している。しかし、引退を渋る組長や金を稼げる主人公を次期組長にしたい上位組織、また敵対組織の介入などに二人は翻弄される。正直、小林稔侍演じる親分がさっさと引退して、次期組長を指名すればいいだけなのに、と思ってしまうのだが。組が消滅してしまうリスクを負ってまで引退を粘るかなと。
正直、登場する組織や人物たちの関係は完全には把握できずに見ていたが、皆の欲望が渦巻きギラギラしている感じがとても良い。たぶん他の人間がやったらただの嫌なやつにしかならない武闘派やくざを魅力的に演じた渡辺謙をはじめ、役者陣もなかなかの演技を見せている。なかでも敵対する関東最大組織の理事長を演じた石橋蓮司の、丁寧な言葉で同意を得るていで相手を強要していく感じが堪らなく良かった。
周囲の様々な策謀の中で兄貴分に真意を疑われていきながらも、それでもぶれずにただ兄貴分を組長にするために奔走する主人公の姿には胸を打たれる。そのためにインテリ派といいながらも、中々の酷いこともしていたりするのも皮肉を感じる。
最後はすれ違う二人の悲しい結末。結局、組長の負ったリスクは間違っていなかったという事か。ただあまり組長のずるさというのも感じられず、運が良かっただけという思いの方が強いので、結局、悪い奴だけが生き残るみたいなエンディングも、そうかな?と少し首をかしげたくなる部分はあった。
その他にも、鉄砲玉が異常に汗かき過ぎじゃない?とか、主人公は車で来たのになんで逃げるときは徒歩なの?とか、渡辺謙のヌードは見せる必要あった?とか、気になる部分はないわけではなかったが、全体的に心躍る雰囲気はあって悪くはない映画だった。
スタッフ/キャスト
監督 橋本一
脚本 成島出/我妻正義
出演 高橋克典
小林稔侍/隆大介/石橋蓮司/夏木マリ/南野陽子/遠野なぎこ/伊原剛志/高知東生/山田純大/坂口憲二/薬師寺保栄/榊英雄/田中哲司/志賀勝
音楽 東京スカパラダイスオーケストラ
撮影 山本英夫
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