★★★☆☆
あらすじ
世間と折り合いをつけられず、自分の幼い子供を育てる事すら困難な女。
感想
幼い子供を抱えて生きる女。しかし子供が襲われるんじゃないかと極度に人と接するのを恐れ、また自身が誤って殺してしまうのではないかとも恐れている。そのせいか、同じ人が二人いるように見える症状までがでている。そんな生きることに困難さを抱えている彼女は自らの手首を切ることで、生きていること、そして体が生きようとしていることを再確認して安心している。
そんな主人公を演じるのがCocco。演技なのか、素なのか分からない状態で迫真過ぎる。体が異常に痩せて細いのもその凄みを感じさせる。不安定で病んでる感じなのに、ときおりすごい普通の表情や反応を見せるのがリアルだ。本当にヤバい人はきっと常にヤバいわけではないはず。
そして、不安定な彼女の存在にさらに追い打ちをかけるような、監督の不安を増幅させるような演出。ぼこぼこに殴られたり、手首を切ったり、フォークを突き刺したりと、直視するのがきついシーンも何か所かあった。
そんな中、一人の男が主人公の前に現れる。そして、男が過剰な反応をする彼女をすべて受け入れることで、ようやく主人公は調和して生きていく方法を知ることが出来た。
やがて男が去り、主人公はまた元に戻ってしまってエンディング。おそらく主人公はそうとしか生きられない自分に苦しさを感じているのだとは思うのだが、はたから見るとあの歌って踊ってからのエンディングの雰囲気は、こんな生きづらい世界だけど私らしく生きる、と開き直っているようにも見えて、ズルいなと感じてしまう自分がいる。世間とうまくやっていく方法を、つかの間とはいえ実践することが出来たのだから、今度は助けを借りずに自分なりにやってみたら?と助言したくなった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作総指揮/出演/撮影/編集 塚本晋也
原案/出演/音楽/美術 Cocco