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「大地の子守歌」 1976

大地の子守歌 [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 山育ちの少女は、育ての老婆の死後、騙されて島の売春宿に売り飛ばされてしまう。

 

感想

 主人公の少女は、登場からして強烈だった。獲物のうさぎを手に持ち、すごい勢いで野山を駆け下りてくる。言葉も荒く、なかなかの野生児感だった。とはいえそんな彼女もまだ幼い少女。育ての老婆が死んで孤児になったところを、やってきた優しい女衒に騙されて島に売り飛ばされてしまう。

 

 しかし別に借金があるわけでもなかったので、本当にただ騙されただけ、というのがひどい。孤児になるとこういうことは日常茶飯事だったのか。まだ百年も経たない昔に、こんな事が普通に行われていたとは恐ろしい。この感じではまだまだこういうことはあるのだろうなと容易に想像できてしまう。本来であれば村の人間が守ってあげるべきなのだろうが、彼女の激しさもあって、元々軽い村八分みたいなところがあるようだった。

 

 

 売られた宿で最初は反抗を見せていた主人公だが、やがてはそこで前向きに生きる事を決意する。置かれた環境で頑張ろうとする姿は健気だが、同時にとてつもなく哀しい。二つの意味で泣ける。特に彼女は孤児になったとはいえ、騙されなければ山で自力で生きていけそうだっただけに悔やんでしまう。

 

 そしてそのままこの世界に染まってしまうのかと思いきや、ワイルドぶりは失わないのが面白い。若さを武器にして、あとはやりたい放題。先輩たちにも平気で殴りかかる。その激しい性格を別の方法に使えば何とかなったのではと思わなくもないのだが、そこまで世の中は甘くないという事なのだろう。今回はたまたま運が良かったが、そうでなければ彼女とて普通に遊女としての一生を生きるしかなかったはずだ。

 

 荒々しい主人公を演じる原田美枝子の腹の据わった演技が良い。時の経過とともに少しずつ表情も変わって見える。女の一代記といった趣の映画で見入ってしまったが、普通なら人生これからという年頃なのに、もはや今後は余生、みたいなエンディングになんとも言えない気持ちになってしまった。

 

 しかし最近はこういう「おしん」みたいな人生ハードモードの女の一代記はめっきり見かけなくなった。だが、この映画の頃はこんな感じの人生を送っていた人が日本にはまだ多かったということなのだろう。今はまた別の形のハードモードの人生が描かれるようになっているので、映画で描かれる内容は世相を反映し、時代とともに変わっていくという事が実感できる。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本 増村保造

 

原作 大地の子守歌 (1974年)


出演 原田美枝子/佐藤佑介/賀原夏子/岡田英次/梶芽衣子/田中絹代

 

音楽 竹村次郎

 

大地の子守歌 - Wikipedia

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