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「天才スピヴェット」 2013

天才スピヴェット(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

  アメリカ西部の片田舎で、家族の中で疎外感を感じながら暮らす天才少年は、権威ある科学賞に選ばれ、東部のワシントンで行われる表彰式に参加するため、家族に黙って一人で列車に飛び乗る。

 

感想

 広大な西部の牧場で暮らす家族。父親は無口なカウボーイ、母は昆虫博士、姉はアイドルを目指し、主人公は天才少年とみな個性的。序盤はそんな彼らの少し変な生活が主人公を中心にコミカルに描かれる。

 

 主人公のレポートを理解できずに怒鳴りつける教師に、権威ある科学誌に送ったら掲載されましたけど?という主人公の天才ぶりは面白い。こんなセリフを言ってみたいものだ。

 

 

 海外の映画だとこういった天才少年を扱った映画はたまにあるが、日本ではほとんどないのはなぜだろう。せいぜい生意気な口を利く子供が登場する程度だ。日本ではそんな子供は無視して他の子供と同じように扱うからだろうか。もしくは排除されてしまって海外に行くしかないのか。どちらにしても突出した才能の持ち主は日本のシステムの中では迷惑な存在とされてしまうのかもしれない。

 

 主人公の家族に影を落としているのが、主人公の双子の弟の事故死。事故の現場にも居合わせた主人公は責任を感じ、両親の悲嘆を感じ取っている。両親に気に入られていた弟の代わりにはなれず、学校でも孤立し、田舎では生きていけないと考えた主人公は、スミソニアン博物館から授与された賞のスピーチに出席し、科学者として生きていこうと決意する。

 

 早朝に一人、重い荷物を引きずって貨物列車に飛び乗る。この貨物列車がアメリカの雄大な自然の中を走る光景がいい。基本的には主人公は列車に乗っているだけなのだが、その中で母親の日記を読んだり、家族の事を考えたり、またドラマもある。行方不明の主人公を探す警備員を、等身大パネルのふりをして誤魔化すシーンは可愛らしくもあり、面白い。

 

 スミソニアン博物館に到着し、天才少年として脚光を浴びる主人公。健気に冷静に振舞うが、それでも最も気にかけているのは家族の事、というのが泣ける。人並外れた知能を持っていても、子供は子供だ。両親の登場に素直に喜び、そして両親も主人公を利用しようとした大人たちに反撃して、弟と同じように主人公も愛していると示すのが良い。

 

 どこかおどけた様なコミカルなシーンに思わずニコリとし、主人公の健気さにしんみりとし、最後にはじんわりと胸が温かくなる、そんな映画。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作総指揮 ジャン=ピエール・ジュネ

 

原作 T・S・スピヴェット君 傑作集

 

出演 カイル・キャトレット/ヘレナ・ボナム=カーター/ジュディ・デイヴィス/カラム・キース・レニー/ニーアム・ウィルソン/ドミニク・ピノン

 

天才スピヴェット - Wikipedia

 

 

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