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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「フェイブルマンズ」 2022

フェイブルマンズ (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 幼い頃に両親に映画館に連れて行ってもらって以来、映画に夢中になった少年は、引っ越しを繰り返しながら成長していく。 

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 スティーヴン・スピルバーグの自伝的作品。151分。

 

感想

 映画好きの少年が、芸術家の母と技術者の父のもとで成長していく姿が描かれる。タイプの違う両親のサポートを得られる主人公は、映画撮影に関心を示す少年にとっては理想的な環境だろう。機材の使い方は教えてもらえるし、撮った映像を皆で鑑賞し、感想を聞く機会も用意してもらえる。

 

 だが主人公は芸術家の母親寄りの人間だ。技術的な面は最初に覚えてしまえばもう大丈夫で、あとはいかに撮るか、撮り続けるかが問題になってくるが、それはアートに対する情熱次第だ。それをいつも後押ししてくれるのが母親だった。父親にとってそれはあくまでも趣味で、息子もいつかは有益な実業を目指すのだろうと思っている。

 

 

 温かな家族に囲まれて、主人公は映画撮影に熱心に取り組み続ける。人を集めてアイデアを試しながら撮影したり、自ら編集して上映会を開いたりと、幼い頃からすでにその後の片鱗を見せていて感心してしまう。

 

 こうなってくると映画とは純粋に楽しいもの、素晴らしいもので、「映画って本当にいいものですね」的な手放しの賛美映画になっていきそうなものだが、そうはならないところに監督の凄みがある。

 

 映像は知りたくなかった真実を明るみにしてしまうこともあるし、逆に虚像を作り出してしまうこともある。アートとは単純に楽しいものではなく、時には苦しくつらいものになり得ることが冷酷に描かれる。主人公はその怖さを思い知らされて、一時は映画撮影を止めてしまった。

 

 しかしその間に出来た恋人の勧めもあって、主人公は撮影を再開する。そしてエンディングへと向かって行くのだが、ここでもシンプルな大団円にはしない。家族のつらい出来事や同級生との衝突を引き起こすものだと理解した上で、主人公はそれでもアートに取り組んでいく覚悟を決める。まったくお花畑感のない、厳しさすら感じてしまう決意が描かれる。

 

 そしてついにチャンスを手にして飛び込んだハリウッドで、主人公がデイヴィッド・リンチ演じる往年の巨匠ジョン・フォードに激励されされるシーンは、彼の強烈なキャラクターに笑ってしまいながらも胸が熱くなった。そしてその短くシンプルなアドバイスに従うかのように、カメラの角度が少し変わるラストシーンにニヤリとさせられる。

 

 見終わった後に背筋がすっと伸びるような、気持ちが引き締まる映画だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作

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脚本/製作 トニー・クシュナー

 

出演 ミシェル・ウィリアムズ/ポール・ダノ/セス・ローゲン/ガブリエル・ラベル/ジャド・ハーシュ/デイヴィッド・リンチ/オークス・フェグリー/ジュリア・バターズ/ジーニー・バーリン/ガブリエル・ベイトマン/グレッグ・グランバーグ

 

音楽 ジョン・ウィリアムズ

 

フェイブルマンズ (字幕版)

フェイブルマンズ (字幕版)

  • ミシェル・ウィリアムズ
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フェイブルマンズ - Wikipedia

 

 

登場する作品

地上最大のショウ(字幕版)

地上最大のショウ(字幕版)

  • チャールトン・ヘストン
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