★★★★☆
あらすじ
朝のワイドショーの生放送中に立てこもり事件が発生し、犯人に呼び出されたニュースキャスター。
感想
ほぼ2時間の朝のワイドショー中に起きた出来事を描く映画。刻々と放送内容が変更され、出演者やスタッフが慌ただしく動き回る様子は、テレビの裏側を知ることができ、臨場感もあっていい。
そして生放送開始直前に立てこもり事件が起きる。しかし7時スタートの番組なので6時頃に事件が起きたことになるが、いくらなんでも早朝過ぎなのでは?と思ってしまった。しかも、人質になった人たちは、老人や妊婦、子どもや若者といった老若男女を取り揃えたメンバーで、犯人含めてどんな早起きの町なんだと思ってしまった。しかも、一番居そうなサラリーマンはいない。
立て籠もり犯に呼び出されるメインキャスターの主人公。誰かに恨みを持たれるようなことをしたかと不安になっているが、テレビの人間なら普通はテレビで訴えたいことがあるのか?と思いそうなものだ。ただ誰しも胸に手を当てて考えてみれば、思い当たる節はでてくるのだろうが。
主人公は現場に向かい、犯人と相対することになる。ここがクライマックスなのは当然なのだが、ここからが長かった。一時間くらいある。それまでは軽い笑いを交えながら良いテンポで展開していたのに、ここからは犯人と主人公の熱いぶつかり合い。ちょっとしんどかった。
しかも犯人の主張が要領を得ないというか、え、それだけ?というような中身の薄いもの。劇中の人物すらそう言及しているので、浅はかな考えで馬鹿な行動をする人たちへの批判を含んでいるのかもしれないが、かなりの停滞感を感じてしまった。
だがそれでも主人公を演じる中井貴一が、良いリアクションの演技を見せていて見ごたえがある。それに呼応するように濱田岳も良かったし、警察役の松重豊も良かった。停滞感を役者陣の熱演が救っている感じだった。
マスコミに対する賛否両論が展開されるような映画だが、どっちもどっちで中途半端になってしまっている印象は否めない。どうせならテレビなんて下らなくて、浮かんでは消えていく諸行無常を映し出すもの、それが面白いんだよ、と極端な感じにした方が気持ちよさを感じられたかもしれない。個人的にはリモコンのボタンを押す視聴者投票なんて下らないと思っているので、不正をしたことに対して反省をして欲しくなかったな、というのはある。
笑いの散りばめられたコミカルな映画という最初の印象からは違ったものに変わっていったが、全体としてはしっかりと伏線も効いていて良くできた物語になっている。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 君塚良一
出演
長澤まさみ/志田未来/池内博之/林遣都/梶原善/木南晴夏/大東駿介/濱田岳/吉田羊/松重豊/時任三郎/北山雅康/渡辺真理/東口宜隆/森田哲矢
音楽 村松崇継