★★★☆☆
内容
飼っている犬からみた著者の生活を綴ったエッセイ。
感想
スピンクシリーズの最終巻。スピンクも高齢となり、あまり愉快な出来事が起こらなくなったからか、思い出話がかなりの部分を占めている。なんとなく年寄りが昔話をよくするようになるのと似ているのかもしれない。まるで犬の生涯の終わりが近付いている事を暗示ているようでもあった。
ほら出た。ほら出た。みんなやってる、だ。みんなやってる。みんな買ってる。みんなそうしてる。だから正しいんだ、だからそれに従わぬお前は間違ってる、ってロジック。あのものたちの最終兵器。いやさ、あのものたちの神。
p38
とはいえ、いつも通りに時おり印象的な言葉が出てくる。そして、そんな言葉を放っておきながら、カッコよく終われず、結局情けない姿を晒すところが面白いし、安心する。このあたりは、エッセイなのだがフィクションが入り混じって不思議な世界観。
スピンクと著者の関係もいかにも古い付き合いといった感じで、衝突するのではなくお互いを認め合うような関係。どことなく互いを見る目も老成している。他者の目で自分を見てみようとするとき、その他者が老人なのか若者なのか、どう設定するかで意外と見方が変わるのかもしれない。
最後の突然の終わり方が切ない。でも別れというものはそういうものだ。いつもとは違うテイストで綴られる文庫本のあと書きには、著者のまだ癒えぬ悲しみを感じさせる。単行本の発売から三年経ち、ということは、別れからすでに三年以上が過ぎているというのに。
著者
登場する作品
「かわいい女 (創元推理文庫 131-2)(可愛い女)」
「マッハGo Go Go ミュージックファイル Round-1」所収「マッハGOGOGO」
「ちあきなおみ全曲集」所収「喝采」
関連する作品
前作