BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「スピンクの笑顔」 2017

スピンクの笑顔

★★★☆☆

 

内容

  飼っている犬からみた著者の生活を綴ったエッセイ。

 

感想

  スピンクシリーズの最終巻。スピンクも高齢となり、あまり愉快な出来事が起こらなくなったからか、思い出話がかなりの部分を占めている。なんとなく年寄りが昔話をよくするようになるのと似ているのかもしれない。まるで犬の生涯の終わりが近付いている事を暗示ているようでもあった。

 

 ほら出た。ほら出た。みんなやってる、だ。みんなやってる。みんな買ってる。みんなそうしてる。だから正しいんだ、だからそれに従わぬお前は間違ってる、ってロジック。あのものたちの最終兵器。いやさ、あのものたちの神。

 p38

 

 とはいえ、いつも通りに時おり印象的な言葉が出てくる。そして、そんな言葉を放っておきながら、カッコよく終われず、結局情けない姿を晒すところが面白いし、安心する。このあたりは、エッセイなのだがフィクションが入り混じって不思議な世界観。

 

 スピンクと著者の関係もいかにも古い付き合いといった感じで、衝突するのではなくお互いを認め合うような関係。どことなく互いを見る目も老成している。他者の目で自分を見てみようとするとき、その他者が老人なのか若者なのか、どう設定するかで意外と見方が変わるのかもしれない。

 

 

 最後の突然の終わり方が切ない。でも別れというものはそういうものだ。いつもとは違うテイストで綴られる文庫本のあと書きには、著者のまだ癒えぬ悲しみを感じさせる。単行本の発売から三年経ち、ということは、別れからすでに三年以上が過ぎているというのに。

 

著者

bookcites.hatenadiary.com

 

スピンクの笑顔 スピンク日記 (講談社文庫)

スピンクの笑顔 スピンク日記 (講談社文庫)

  • 作者:町田康
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: Kindle版
 

 

 

登場する作品

かわいい女 (創元推理文庫 131-2)(可愛い女)」

bookcites.hatenadiary.com

多甚古村

花嫁

藪の中

たどり着いたらいつも雨降り

マッハGo Go Go ミュージックファイル Round-1」所収「マッハGOGOGO」

花笠道中

ちあきなおみ全曲集」所収「喝采」

悲しみのアンジー

港が見える丘

 

 

関連する作品

前作

bookcites.hatenadiary.com

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com