★★★★☆
あらすじ
生放送で、ワンカットのゾンビドラマを取るよう依頼された監督。
感想
冒頭、ゾンビ映画撮影中の現場で、本当にゾンビが現れてしまうというストーリーが展開される。ひねってはいるがありがちなストーリーだし、気になる点は多いし、違和感もあるしで、話題になった映画だが何が凄いのだろうと思いながら見ていた。強いて言うならワンカットで撮ってることくらいか?と訝しみながら。
そしてゾンビストーリーは結末を迎え、一旦エンドクレジットが流れる。そこからその1か月前の物語が始まることで、ようやく映画の構造が分かってくる。いかれた感じの監督は実は気弱そうな男で、それぞれのキャスト達も癖のある人物たちだった。彼らがいかにこのゾンビドラマを作り上げたかが、描かれていく。
緊迫した生放送の中で次々と起こる不測の事態に、臨機応変に時に無理やりに一丸となって対応していくスタッフと演者たち。どことなく三谷幸喜の映画を思い起こさせる。最初見た時の違和感や気になった点が伏線となっていて、次々と回収されていくのは面白かった。
ただ、冒頭のドラマで既に笑える部分があったのはマイナスなような気がした。シリアスなゾンビ映画でもなぜかコミカルに見えるシーンはあるものだが、この映画の場合は、違和感程度に抑えておいた方が後半にもっと笑えたような気がする。とはいっても、前振りとなるドラマは30分以上あるので、この部分でもある程度は観客を惹きつけておかないと、つまらないと判断されて途中で帰られてしまう可能性もあるわけで、難しいところではある。
ドタバタしながらも皆が一致団結してやり遂げようとする姿を見ていると、なんだかとても明るい気分になれて元気が出てくる。このドラマに対する皆の情熱や愛情も感じられて、爽やかな気分で見終えることが出来た。
この映画はこれでいいが、この物語のように皆で頑張って作り上げた事に満足してしまい、作品の出来に対する自己採点が甘くなってしまうのはありがちな話なので、頑張ったからといってすべてが許されるわけではない、という事は肝に銘じておく必要はある。頑張った事とその結果に対する評価は別物だ。それは映画だけに限らず何事もそうなので気をつけたい。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原作/編集 上田慎一郎
出演 濱津隆之/真魚/しゅはまはるみ/長屋和彰/細井学/市原洋/山﨑俊太郎/大沢真一郎/竹原芳子(どんぐり)/吉田美紀/合田純奈/浅森咲希奈/秋山ゆずき