「インファナル・アフェア無間序曲」　2003

★★★★☆

あらすじ

　裏社会のボスが殺され、後継者をめぐって緊迫感が高まる中、警察からマフィアへ送り込まれた潜入捜査官、マフィアから警察に送り込まれたスパイは、苦悩しながらもそれぞれの道を行く。

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　「インファナル・アフェア」シリーズの第２作目で、前作の前日譚が描かれる。香港映画。119分。

感想

　前作の前日譚として、警察とマフィア、双方から双方へ送り込まれたスパイの若かりし頃が描かれる。ただし彼らの物語というよりは、彼らを送り込んだ両サイドのボスを中心とした群像劇だ。

　物語は、裏社会のボスが殺されたところから始まる。てっきり血みどろの抗争劇になっていくのかと思ったが、案外あっさりと決着がついてしまった。そして新たな体制下で、警察にスパイを送りこんだ男がピンチを乗り越え、好機を掴んでトップに立つまでが描かれる。

　彼はトップの座を奪いに行ったというよりも、成り行きでそうなった印象だ。運命的なものを感じる。だがその過程で、妻を失い、ボスの家族を殺すなど、たくさんの業を重ねてしまった。

　彼同様にマフィア対策をする警部も、そして送り込まれたスパイたちも業を重ねている。一筋縄ではいかない世界で誰も清廉潔白ではいられない。否応なしに積み重なっていく苦悩に、どんよりと重苦しい気分に包まれていく。

　ただ、皆が自分の目的を果たすための代償みたいなところがあるのに対して、潜入捜査官だけは偽りの自分のために恋人が堕胎したりしているわけで、いちばん損な役割だ。それから警察に潜入したスパイは、最初からいろいろと裏切っていたのかと印象が変わった。

　統治する国が変わる香港返還の様子を重ねて、誰のため、何のためにやるのか？と心揺れながら生きる男たちの姿が描かれる。前作のような分かりやすい展開ではないが、あの事件につながる前日譚として、重厚な人間ドラマが堪能できる映画だ。こんなカルマを抱えた男たちの物語だったのかと、改めて前作に思いを馳せてしまう。