★★★★☆
あらすじ
拳銃を紛失してしまった刑事と、その捜索に協力するPTU(香港警察特殊機動部隊)。
感想
紛失してしまった拳銃を探す刑事と、それに協力したPTUの一晩の出来事が描かれている。そしてそれと同時並行して殺人事件も起きており、殺された息子の犯人を探すギャングのボスらの動きも加わって、物語は予期せぬ方向に進んでいく。
刑事とギャングが偶然レストランで出くわす冒頭のシーンから緊張感がある。一触即発の雰囲気を漂わせながらも、ぎりぎりの距離感で互いに威圧しあう。そして、緊張が解けそうになった瞬間に意外な展開で起きる事件。この張りつめた空気を保ったまま、最後までグイグイと引っ張っていく。
この映画は、なによりも照明の使い方が印象的で、光と影のコントラストが強烈。眩しいくらいの光と陰影の濃い影。それらが、登場人物たちの強い意志や焦りといった内面を、くっきりと浮かび上がらせているかのようだ。グッと前に出てくるようなカメラワークも良かった。
そして登場人物たちは皆無口。必要以上に喋らないというよりも、必要な事ですら喋らない。さらに表情も乏しく、リアクションもほとんどしないので彼らが何を考えているのか良く分からない。これが次の展開を読めなくさせて、ドキドキさせてくれる。
途中で突然「ギョロメ」と「ハゲ」という知らないギャングのボスの名前が登場して一瞬戸惑ったが、観ていたら何となく関係性は見えてきた。そしてクライマックスは上手くオチがついている。刑事が拳銃を紛失した時、道が汚すぎだろと思ったのだが、それが伏線になっていた。そこはちゃんと確認しようよと言いたくなるが、この刑事のキャラクター的に有り得そうだ。序盤から徐々に緊張感を高めていき、最後に爆発する気持ちの良い映画。
しかし、PTUの通常の仕事がこういうものなのかは良く分からないが、集団で夜の街を歩く姿はかなりの威圧感がある。法を多少はみ出してでも、必ず目的を果たすという彼らの強い意志は頼もしくもあるが、それと同時に公権力の恐ろしさも感じられる。彼らが無口で無表情、強い光と影の中にいるのは、そういったことも表現しているのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/製作/製作総指揮 ジョニー・トー
脚本 アウ・キンイー/ヤウ・ナイホイ
出演 サイモン・ヤム/ラム・シュー/ルビー・ウォン/マギー・シュウ