★★★☆☆
あらすじ
新入生として、野球部員たちが暮らす一軒家に引っ越してきた大学生。
リチャード・リンクレイター監督。監督の過去作「バッド・チューニング」「6才のボクが、大人になるまで。」の精神的続編。112分。
感想
野球部員が暮らす一軒家に引っ越してきた新入生の、大学最初の授業が始まるまでの4日間が描かれる。新天地に到着して初対面のメンバーたちとあいさつし、荷物を置いたらそのまま皆と飲みに出掛ける。自分なら静かに初日までの時間を過ごしたいところだが、彼らはエネルギッシュだ。
そしてここからいかにもアメリカの大学生らしい騒々しい生活が始まる。酒場でバカ騒ぎし、女性たちに声をかけまくり、家に戻ってもパーティと、ずっと賑やかだ。朝起きたら自宅やゲーセンで新しい仲間とマリファナ吸ったりじゃれ合ったりしながら駄弁り、そして夜になればまた街に繰り出す。全然一人になる時間がない。
映画の舞台は80年代でスマホもない時代だ。ほとんどの人は暇を持て余し、何かといえば集まって、喋ったり騒いだりしていたのだろう。暇だけでなくエネルギーまでも持て余していた大学生ならなおさらだ。今でも似たようなものかもしれないが、それぞれがスマホを眺めて黙りこくる時間が長そうだ。その場にいる人たちだけで濃密な時間を過ごしていた昔は、今から考えるととても人間らしい時間の過ごし方をしているように見える。
主人公と個性的な仲間たちの様子が、コミカルにテンポよく展開されていく。当時の音楽がたくさん流れるのも楽しい。わずか4日間とは思えないバラエティに富んだ怒涛の内容だ。ただ無意味に騒いでいるようだが、その中で多くの人と出会い、貴重な体験をして、気付かないうちに人生に大切なことを学んでいる。
主人公らはいわゆる体育会系で、スポーツものでもなければ大抵は悪意のある描き方をされがちだが、そういうものが全くなく、フラットに描かれているのが印象的だ。なんでも監督自身が体育会系の大学生だったらしく、その影響なのだろう。大学の花形の学生たちが、こういう形でなんの衒いもなく描かれているのは珍しいかもしれない。
それから「本当に野球部なの?」と思ってしまうほど野球のシーンはなかったが、終盤にようやく練習シーンがあった。野球をするために大学に来ても、それだけが学生生活ではないということなのだろう。
主人公は新しい環境に心を開いて臨み、いつの間にかすっかり馴染んでしまった。なんでも拒絶するのではなく、まずは広い心で受け入れてみることの大切さを痛感する。だがただ流されるだけではダメで、やるべきことはやる自分をしっかり持つことも大事だと学んだ。大学が始まるまでに必要な心構えを身に着け、恋人まで出来たのだから十分すぎるスタートだ。授業が始まった途端に「もう大丈夫」と安心し、居眠りを始めてしまうのも分からないではない。
新生活が始まる前に見ると元気が出そうな映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 リチャード・リンクレイター
出演 ブレイク・ジェンナー/ゾーイ・ドゥイッチ/ライアン・グスマン/タイラー・ホークリン/グレン・パウエル/ワイアット・ラッセル/オースティン・アメリオ
エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に - Wikipedia
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