★★★☆☆
あらすじ
いさかいを収めるために敵対する組の構成員に会いに行った男は、その姉が有名ないかさま賭博師の妻であることを知る。92分。
感想
仁侠映画なのに序盤から女子高生三人がキャッキャとはしゃぐシーンがしばらく続くのが面白い。切った張ったを期待して映画館にやってきた当時の男たちは、どんな気持ちでこれを見ていたのだろうと想像するだけでも笑ってしまう。背伸びしたい年頃の少女向け映画のような始まりだった。
この女子高生たちはヤクザの親分の娘とその友人たちだ。その組の構成員が、友人の一人を騙して売り飛ばしてしまうのだからあくどい。普通は、自分の親分の娘の友人にそんなことをしようなんて思わないだろう。
売り飛ばされた女子高生は、本来なら可哀想な子供ということになるのだが、本人がポジティブでノリノリなのでそんな感じはあまりない。それでも、そんな肉屋を支持する豚みたいなことでいいのか?みたいな心のざわつきはある。
少女を売り飛ばした組員が、彼女に惚れていた敵対する組員といざこざを起こし、それがやがて組同士の抗争へと拡大していくのだが、なんともショボい原因だ。主人公はそのいざこざを収めようと訪れた相手組員の家で、その姉が一度会ったことのあるいかさま賭博の女と気付く。
その後は組同士の抗争と同時に、女の夫である有名ないかさま賭博師との対決が描かれていく。しかし抗争と賭博がどんな関係にあるのかがいまいちよく分からなかった。抗争は組のため、賭博は女のため、ということだったのだろうか。
だが抗争を収めるために売り飛ばされた少女を探しに行ったはずなのに、賭博に夢中ですっかり忘れてしまった様子の主人公には間抜けなものを感じてしまった。寄り道してないで抗争解決に全力を尽くすべきなのでは?と問い詰めたくなる。
やがて組同士の抗争にも決着がつくが、クライマックスからの後日談が長く、しかもグダグダの結末でどうにもスッキリしない。抗争と賭博がどっちつかずに描かれており、あまりカタルシスを得られないものだった。
ただ、照明を当てる位置を次々と変えたり、戸がすべて倒れて真っ赤な背景が浮かび上がったりする舞台のような映像演出は印象的だった。よく見ると主演の小林旭の眉毛もすごいことになっていて、どこか歌舞伎ぽさもある。ストーリーは勘所がつかみにくいが、映像はクールな映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 鈴木清順
原作 地底の歌 (1949年)
出演 小林旭/松原智恵子/平田大三郎/中原早苗/伊藤弘子/野呂圭介/高品格/殿山泰司/伊藤雄之助
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