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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「侠骨一代」 1967

侠骨一代

★★☆☆☆

 

あらすじ

 ヤクザが牛耳る芝浦で働き始めた男は、死んだ母親そっくりの芸者と出会う。92分。

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感想

 序盤は主人公の兵役時代が描かれる。上官のいじめに割とカジュアルにキレて反撃する様子はなかなか衝撃だった。まるで子供の喧嘩みたいだ。母親の突然の訃報に泣きだしてしまった主人公を殴る上官は人でなしだったが、それに怒ってマシンガンを連射する主人公もたいがいだった。彼のように皆が自己主張し、それをちゃんと統率できていたなら旧日本軍はもっとまともに戦えていたような気もする。

 

 除隊後は組に入り、主人公は人足仕事をするようになる。そこで他の組との抗争となっていくのだが、中盤はわりとおとなしい印象だ。主人公の胆力を垣間見せながらも、母親と顔がよく似た芸者との関係が中心となって描かれていく。

 

 

 しかし、主人公が彼女を母親だと思って勝手に尽くすのは理解できるとして、そっくりと言われた芸者が母親のつもりで振る舞うようになるのはよく分からなかった。金だけくれる上客が見つかったと喜びそうなものだが、恵まれない境遇の人をたくさん見る時代や職業だっただけに、何かが彼女の琴線に触れたのかもしれない。この映画に登場する貧しい人々は総じて他人を思いやる優しい心を持っている。

 

 母親への想いが強く感じられる映画だが、最近はこんな風にストレートに描く物語は見なくなったような気がする。昔は貧しかったので母親への苦労のかけ方が途轍もなかったからなのかもしれない。だとすると貧しくなりつつある日本ではまたこういう物語が増えてくるのだろうか。以前、美輪明宏の「ヨイトマケの唄」が再注目され、以来よくカバーされるようになったが、これはその兆しなのかもしれない。あるいは当時を知る世代の最後の郷愁なのかもしれないが。

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 ラストは、相手の攻撃に我慢の限界を迎えた主人公が対決に向かう、やくざ映画定番の流れだ。だが両者の対立が深まる様子がしっかりと描かれていないので盛り上がりに欠け、対決シーンもどこか中途半端だった。

 

 ただ、対決に向かう途中で敵組織にいた戦友と戦い、決着後にかけられたセリフを合図に主題歌が流れ出すシーンはカッコ良かった。主演の高倉健は、大事なシーンでは引き締まった良い表情を見せる。映像にグッと力がみなぎり、さすがスター、といったところだ。

 

 この対決も、主人公のハレの日のために芸者が無理をして用意した一張羅の着物を着て向かっており、どうにも主人公と芸者の親子プレイ、マザコンプレイを見せられているような気になってしまう。メタファーのつもりなのか、芸者がやたらと牛乳を飲むのが可笑しかった。一度、彼女が勢いよく飲んだ牛乳が口元から溢れてしまっているシーンがあったが、あれは単なるミスだったのか、抑えきれない母性を表していたのか、どっちだったのだろうか。

 

スタッフ/キャスト

監督 マキノ雅弘

 

原作 侠骨一代 (ROMANBOOKS)

 

出演

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大木実/石山健二郎/志村喬/宮園純子/富司純子/室田日出男/八名信夫/潮健児/南原宏治

 

侠骨一代

侠骨一代

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