★★★★☆
あらすじ
戊辰戦争が始まって西軍が迫る中、越後長岡藩は、家老・河井継之助の方針により、どちらにもつかず独自の行動を取ることを決める。
北越戦争時の河井継之助を描いた作品。114分。
感想
序盤は西軍が迫る中、兵を鍛え、人と会い、そして芸者と遊ぶ主人公・河井継之助の姿が描かれる。やるべきことはちゃんとやった上で、あとは時が来るまでジタバタしない主人公の肝の据わった性格が伝わってくる。
凡人だったらオロオロして余計なことをしてしまったり、逆に何も出来なくなってしまいそうだ。
そんな中で主人公は、妻を連れて芸者遊びをしたり、知人の医者の絵の上手い息子に跡を継がずに画家になるように勧めたりしている。封建的な時代に軽々とそんなことをやれてしまうなんて、相当に進歩的な考えをしていることが窺える。外国事情にも詳しいようだ。
それだけに、主君への恩だとか藩を守るだとか、それでも古い考えにこだわっている主人公が不可解に思えてしまう。本来なら、そんなの知らんと好きなことを始めてしまいそうな人だ。だが彼自身が言っていたように、立場を離れたら宙に浮いたような一生を送ってしまう、という思いがあったからなのだろう。これは一見、良いことのように思えて、悪くとらえることも出来てしまう厄介な考え方だ。
他人には好きなように生きろと言えるのだから、主人公にとってこれは信条であり、また呪縛にもなっていたのかもしれない。
一度奪われた城を取り戻すシーンや、もはやこれまでと自刃するシーンなど、心動かされるシーンはいくつかあった。だが全体としては、教科書的にエピソードが羅列されただけの印象だ。それらがつながり、深みのある河井継之助像が浮かび上がってくることはない。また藩の内情や外部の状況など、周囲の情報も断片的で分かりづらい。
それから、冒頭の徳川慶喜による大政奉還や、主人公が藩の方針を述べる場面で、長々とセリフを喋ってテンポが悪くなるのが気になった。皆に重大な話を言って聞かせるいわば演説のシーンなので、しっかり伝わるようにとゆっくり話していたのだとは思うが、あまりにも長いので途中で気が遠くなりそうになってしまった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 小泉堯史
出演
香川京子/田中泯/東出昌大/芳根京子/坂東龍汰/榎木孝明/渡辺大/AKIRA/永山絢斗/佐々木蔵之介/井川比佐志/山本學/仲代達矢/矢島健一
音楽 加古隆
登場する人物
河井継之助/徳川慶喜/小山正太郎/川島億次郎/山本帯刀/小山良運/松平定敬/岩村精一郎/牧野忠恭(雪堂)