★★★☆☆
あらすじ
劣勢の戦況が続く中、無策な参謀たちに憤る中尉は、志願して戦艦大和から駆逐艦「黒雲」へと転任する。
高倉健主演、殿山泰司、清川虹子ら出演。89分。
感想
戦艦大和から駆逐艦へ移って来たエリート中尉が主人公だ。荒くれ者ばかりの乗組員らと寝食を共にし、共に戦う中で絆を深めていく。彼らが、乗り込む駆逐艦「黒雲」の名にちなみ、自らを「黒雲一家」と称していることもあって、艦長を組長とするやくざ映画のような趣がある。現場が顧みられない巨大な仁侠組織で、それでも仁義を通そうとする末端の任侠一家といったところだろうか。
彼らは太平洋上で何度も戦闘を繰り広げる。古い映画だからとナメていたが、戦闘シーンは特撮映像がかなりよく出来ている。魚雷が発射され、遠くの戦艦が炎上する夜更けのシーンなどは、モノクロ映像の質感とも相まって、なんとも言えない臨場感を生み出して、かなりの迫力だ。その他、戦艦を下から煽るように撮ったり、大事なシーンではグッと寄ったりするなど、随所で光るカメラワークを見せている。
頼りがいのある艦長や陽気な乗組員らが織りなす艦上のドラマも、定番ながら悪くない。そのまま愉快な軍隊ものにしても良さげな展開だが、そうするわけにはいかないのが日本の宿命だ。無謀な作戦で突き進む上層部や、権威を振りかざすだけの無能な上官など、日本の駄目な点をあぶり出し、しっかりと戦争の愚かさも描いている。
終戦間際の最後の戦いを描くクライマックスも、記録映像を使用するだけにとどめて、特攻を美化するような、お涙頂戴の過剰なドラマには仕立てていない。国家ではなく、あくまでも仲間のために手を取り合う人々を称えようとする姿勢は好感が持てる。この皆の頑張りを、戦争ではなく別のところで活かしたい、活かしたかったという切なる思いも伝わってくる。
予想していたよりも全然良作だなと思っていたら、沈没寸前の船を捨てたくない主人公が、きっと大丈夫、まだやれると精神論を唱え始め、にわかに雲行きが怪しくなった。そこは、どこをどうすれば持ち直すのか、きっちりと合理的な理由を挙げて主張して欲しかった。それでは「皇軍が負けるわけない」と、意味不明な理由で無謀なことばかりしていた参謀たちとなんら変わらない。
そして命令とはいえ、勝てる見込みがゼロの次なる戦いへと向かう姿に、もう勘弁してよと天を仰ぎたくなった。絶望感がすごいが、実は艦は持ち直すことなく沈没し、あのラストシーンは死にゆく乗組員たちが見た刹那の幻想だった、ということのような気もする。そうであってほしいと願ってしまう。
スタッフ/キャスト
監督 島津昇一
出演
田崎潤/神田隆/中山昭二/安部徹/増田順司/殿山泰司/花沢徳衛/清川虹子
撮影 林七郎
