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「一人息子」 1936

一人息子

 

★★★☆☆

 

あらすじ

 貧しい中、女手一つで苦労して育てた息子の出世した姿を見るために上京した母親。87分。

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感想

 さんざん苦労して息子に教育を与えたのに、思ったようにはなっていなかった母親の悲哀が描かれる。

 

 だがその前に、息子の行動が引っかかってしまう。苦労をかけた親に連絡もなく結婚し、しかも子供までいるなんて。そのことに驚かされるが、この時代はそれが普通だったのだろうか。家柄を気にすることもない貧しい家庭だからなのかもしれない。息子のあっけらからんとした物言いに戸惑った。

 

 親子水入らずで過ごせると思った母親も想定外だっただろう。調子が狂ったに違いない。さらには息子のうだつの上がらない生活ぶり。がっかりしながらも何も言わずにいたが、息子に水を向けられると胸にたまっていたものがあふれだしてしまう。

 

 

 息子がいくら「このままで終わるつもりはない」と言っても、母親から見れば、結婚し子供も作ってこのまま落ち着いてしまおうとしているように見えるだろう。母親に申し訳ないという気持ちもあり、息子なりに頑張ったのだと思うが、全財産を息子にかけていた母親の気持ちを考えると堪らなくなる。

 

 気落ちする母親だったが、子供が怪我をして困っている近所の奥さんに対する息子の行動を見て、考えを変える。出世はしていないが、息子は他人の不幸を見て見ぬふりする人間ではなかったことにしみじみと喜ぶ母親。両立できないわけではないだろうが、少なくとも持っていて欲しい心はちゃんと持っていた。

 

 田舎に戻って仕事の合間に、陽だまりの中でしばし遠くを見つめる母親の表情が印象的だった。息子のために尽くした人生は、大満足の結果とはいえないが、まずまずではあったな、と自分を納得させるような表情だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/原案

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出演 飯田蝶子/日守新一/突貫小僧

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一人息子

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  • 飯田蝶子
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一人息子 (映画) - Wikipedia

 

 

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