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「楢山節考」 1983

楢山節考

★★★☆☆

 

あらすじ

 山奥で家族と暮らす老婆は、まだ元気ではあったが、村のしきたりに従って姥捨て山に行くことを決意する。

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 今村昌平監督、緒形拳、坂本スミ子、倍賞美津子ら出演。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。131分。

 

感想

 山奥で暮らす一家の物語だ。姥捨て山の話がメインになるのかと思っていたが、冬から始まる村の一年を描いていくものだった。最初は姥捨て山の話は匂わす程度で、最後に本格的に描かれる。

 

 緒形拳演じる主人公を中心とした一家は、子どもが生まれ、妻が亡くなり、後妻を迎え、息子の妊娠した恋人が住み着き、と人の出入りが多い。大所帯で、思っていたよりも彼らの生活には余裕があった。別々に寝られるくらい家は大きいし、食べ物に困っている様子もない。

 

 

 ただ、それでも彼らは「生活が厳しい」と言っているのだから、ぎりぎりの生活ではあるのだろう。食事する人間の数は気にしているので、何人までは大丈夫だと計算はしているようだ。

 

 一家の暮らしと共に村の共同体としての様子も描かれる。普段はそんなに助け合っている風ではないが、棺桶を作る当番があるなど、すでに組織化された体制になっていることは分かる。

 

 そんな中で村人が団結し、盗みを働いていた一家を処刑するシーンは強烈だった。いつの間にか話が決まっていて、熱に浮かされたように決行される。最初は大騒ぎだったのに、生き埋めの段になると急に静かになり、黙々と作業をするのは妙に怖かった。

 

 村人たちの生活を見ていると、家を守ることが彼らの最大の目標であることが分かってくる。長男以外の子供は不要なので、売って外貨を稼ぐか間引くかし、次世代が安泰となれば旧世代には去ってもらう。残酷だが、それが彼らの生存戦略だ。

 

 そう考えると彼らも、遺伝子を残すために必死になっている生き物とそう変わらない。生と死が身近で、それゆえに性も旺盛なところも似ている。蛇やタヌキなど野生の生物の映像がたくさん登場するのは、それを示唆しているのだろう。

 

 他の生き物と違うのは、たくさんの遺伝子を残そうとするのではなく、確実に効率的にと、集中して遺伝子を残そうとしているところくらいだろうか。

 

 不思議なのは、この生存戦略では不利な立場に立たされる者も、それを受け入れていることだ。「ヤッコ」として下人同然に扱われる次男もそうだし、山に捨てられてしまう老婆もそうだ。これも女王アリに仕える働きアリや、交尾後に食べられてしまうオスのカマキリみたいなもので、生き物の本能なのかもしれない。

 

 だが、そんなシステムの犠牲となった者たちのやりきれない思いが、時おり顔を出している。いつも悶々としている「ヤッコ」や、山に捨てられることを拒否する老人らは、効率的なシステムの負の側面を表しているといえるだろう。ヤッコと老婆、疎外された者同士が慰め合うシーンは優しい世界だった。

 

 最後に、主人公が母親を捨てに行く道中が淡々と、たっぷりと時間を使って描かれる。それまでに親子の絆がたっぷりと見られらわけではないが、それでもやはり、別れの場面は泣けてきた。

 

 つらい別れから戻った主人公は、妻や義理の娘がさっそく母親のものだった布切れを身に着けていることに気付く。非情に見えるが、家を受け継いでいくとはそういうことだ。そんな厳しい世界で、それでも人々は精一杯に生き、命をつないできたのだなと、厳粛な気持ちになる。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 今村昌平

 

原作 「楢山節考」「東北の神武たち」 「楢山節考/東北の神武たち - 深沢七郎初期短篇集 (中公文庫)」所収

 

出演 緒形拳/坂本スミ子/左とん平/あき竹城/倍賞美津子/清川虹子/辰巳柳太郎/常田富士男/深水三章/ケーシー高峰/小沢昭一/小林稔侍/三木のり平/殿山泰司

 

音楽 池辺晋一郎

 

楢山節考

楢山節考

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楢山節考 (1983年の映画) - Wikipedia

 

 

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