★★★☆☆
あらすじ
幕末の駿河の小藩に、アメリカからやって来た黒人ミュージシャンが流れ着く。85分。
感想
「ジャズ大名」というタイトルはインパクトがある。スチャダラパーの昔の曲でこの言葉が出てくる曲が確かあったはずだが、どの曲か思い出せない(「ジャズ大名」じゃなく「ジャズ空手」だった)。でも、このタイトルを初めて聞いた時は、あんな感じのリアクションをしてしまいそうだ。
舞台は、幕末の黒船来航以来の政局が混乱する世の中。そんな中、アフリカに戻ろうとしていたアメリカの黒人たちが駿河の小藩に流れ着く。日本中の各藩が、情勢を見極めようと慎重になっており、幕府と倒幕派の両サイドから付け入られないよう事なかれ主義を貫いている時期だ。当然、バレないように黒人たちを藩の外に追い払おうとする意見が出てくる。
彼らを救うためにちょっとしたドラマが生まれていくのかと思っていたのだが、そんな事はなかった。小藩の殿様は、幕府も討幕派も好きにしろとばかりに投げやりな態度だ。政局関係なしで黒人たちに興味を示している。そして彼らが持っていた楽器にも関心を持って、一気に大合奏が始まる。
ここからは、ただひたすらの演奏シーンとなる。政府が倒れ新政府が樹立して、と世の中は目まぐるしく変化しているのにお構いなし。気分としては、ええじゃないかを踊る民衆と同じだろうか。地上の出来事をよそに演奏を続ける様子は映画「アンダーグラウンド」を思わせる。
世間の空気に流されないで、こっちはこっちで好きにやらせてもらう、という一種の反骨精神みたいなものだろう。観客にも難しい事は考えずに音楽を楽しもうぜ、と言っているかのようだった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 岡本喜八
原作 「ジャズ大名」(エロチック街道(新潮文庫)収録)
出演 古谷一行/財津一郎/神崎愛/殿山泰司/本田博太郎/利重剛/ミッキー・カーチス/*唐十郎 /六平直政/タモリ*
*友情出演 **特別出演
特別出演/音楽 山下洋輔
音楽 筒井康隆