★★★☆☆
内容
吉行淳之介による、原稿用紙5枚から10枚前後の掌編を集めた小説集。
感想
短編よりもさらに短い掌編を集めた作品集だ。ページ数に制約があり、まとまった話を展開するには厳しいせいか、夢を題材にした話が多い。確かに夢の話なら、支離滅裂でも問題ないし、幻想的にもシュールにも好きなように書くことができる。
そんな中で、ホテルで密会した男女を描く「あいびき」は面白かった。普通に事が進むのかと思っていたら途中で様相が変わり、そっちの意味だったのかとニヤリとさせられるオチが付く。どこか「注文の多い料理店」のような趣があった。
しかし、これほどくっきりとした物語はまれで、その他はだいたい抽象的な展開を見せる。グッと気持ちをとらえるものもあれば、ピンと来ないものもあり、作品ごとに相性が合う合わないがありそうだ。
「暗い道」の中の抽象的な描写の途中で、あきらめてしまったのか、なにをいっているのか分からない場合は自分の受胎時まで遡ってくださいと、カッコ書きで説明を始めてしまう箇所があったのは少し可笑しかった。心が折れたのか、急に伝わっていないかもと不安になったのか。
その他、ボードゲームのオセロに言及する掌編がいくつかあったのも印象に残る。著者が好きだったのだろうか。石は黒と白の二面性を持ち、盤面の形勢が一気にひっくり返るようなドラマチックなゲームでもあるので、オセロはよく考えれば文学的な存在かもしれない。
一編一編がサクッと読めるので、一気に読むというよりは、少しずつじっくりと味わいながら読みたい掌編集だ。
著者
吉行淳之介
登場する作品
「トリストラム・シャンディの生涯と意見(トリストラム・シャンディ 上 (岩波文庫))」
「オセロ(オセロー(新潮文庫))」


