★★★☆☆
あらすじ
1980年。映研で撮る映画に主演するもヌードになることを求められ戸惑う女子高生の三女が暮らす実家に、暴露本を出されて芸能界を辞め、教師を目指すことにした元アイドルの二女、夫の浮気を疑い家出した長女が戻って来る。
感想
今も活躍する役者たちがたくさん登場する映画だ。20年前の映画なので当然、皆今よりも若い。それに加えて、この映画は時代設定がさらにその20年前の1980年なので、昭和な雰囲気の中で当時のファッションに身を包む彼らを見ていたら、なんだか時代感覚がバグってくる。特に序盤は、みんな若いな、でもこの時代はまだそんな歳ではないはず、と無意識に考え必死に調整していた。不思議で面白い感覚だった。
15歳、25歳、35歳と10歳違いの三姉妹の、1980年12月の様子が描かれる。それぞれの色恋を中心にしながら、コミカルさを交えて展開していく。それぞれのシーンを見るとそれなりに笑えたりはするのだが、テンポが一定でメリハリがなく、全体を通してみると集中力を保つのが難しかった。
そんな映画の中で多少跳ねるのは、映像研究会の試写会で突如メンバーが踊り出すシーンだろうか。なんの脈絡もないシーンなのだが、若者のパッションがはじけていて良かった。「台風クラブ」の同様のシーンを思い出させるような印象的なシーンだった。
この映画は「1980年」が重要なキーワードとなっている。ジョン・レノンが死に、テクノ・ミュージックが現れ、漫才ブームが始まり、インベーダー・ゲームやノーパン喫茶が流行する時代だ。それぞれの事象は個別になんとなく知っていたが、それらがまとめて描かれることで、この時代の雰囲気がなんとなく伝わってきた。
80年代と聞くと、個人的にはバブルで浮かれていた末期を勝手に思い浮かべてしまうのだが、その初期の頃はずいぶんと雰囲気が違ったのだなと感じた。考えてみれば、80年代は日本の歴史上、最良の10年だったと言えるのかもしれない。人々の意識もずいぶんと変わった。
最高の10年ではあるが、映像研のように皆で集まりワイワイやる時代は終わり、ウォークマンに代表されるような、それぞれが個に引きこもる時代の始まりでもあったのかもしれない。村の時代から都市の時代へ。どちらも善し悪しはあるのだろうが、ともかく時代は変わり始める。その幕開けを感じさせる映画だ。
ところで何度かあった電話のシーンで、電話の音が聞こえなかったのはなぜなのだろう?演出なのかミスなのか、気になった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
製作 林哲次/榎本憲男
出演 ともさかりえ/犬山イヌコ
及川光博/串田和美/勝地涼/大山鎬則/みのすけ/山崎一/田口トモロヲ/豊永利行/渡辺卓/峯村リエ/三宅弘城/大倉孝二/綾田俊樹/伊武雅刀/忌野清志郎/江波杏子/掟ポルシェ/坂田聡/マギー/ロマン優光/鈴木慶一/手塚とおる/長塚圭史/温水洋一/ピエール瀧/広岡由里子/森若香織/B&B/ノゾエ征爾/野間口徹
音楽 岸野雄一