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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「トゥルー・クライム」 1999

トゥルー・クライム(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 問題ばかりを起こして上司から疎まれていたベテラン記者は、事故で亡くなった同僚の代役として急遽、刑執行直前の死刑囚のインタビューを任される。

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感想

 型破りな記者が、無実の罪で死刑を宣告された男を救う物語だ。よくある冤罪事件ものだが、それが死刑執行当日の一日で行われるのが特色だ。じっくりと調査して証拠を揃え、裁判で無実を訴えっているような時間はない。主人公が真相を求めて奔走する様子と、死刑囚が刑執行前の最後の一日を過ごす様子が並行して描かれる。

 

 このような人命が関わる切羽詰まった状況の中では重苦しい空気になりがちだが、意外とコミカルなシーンは多い。主人公である記者は同僚と軽口を叩きあったり、約束していたからと時間がない中で娘を無理に動物園に連れて行ったりする。余裕があるなと思ってしまうが、主人公はまだ半信半疑だったからだろう。

 

 

 そんな中で面白かったのは、ジェームズ・ウッズ演じる編集長とのジョークを交えた丁々発止のやり取りだ。奥さんを寝取る話をネタにしたりして、どこまで冗談でどこまで本気なのかが分からない。当惑しながらも、真顔で話す二人に思わず笑ってしまう。これらは男らしさを基としたジョークなのだろう。奥さんを他人に貸してやれる男としての度量の広さや、そんなことでは傷つかないタフガイぶりをアピールしている。

 

 これらは男ばかりの集団でありがちなもので、互いに冗談と認識しているうちはいいのだが、エスカレートしたり、中の誰かが真に受けてしまうと大ごとになってこじれてしまうやつだ。この映画では、クリント・イーストウッドの映画らしく、男らしさをベースにした笑いが多い。時代の変化と共に冷や冷やするシーンにもなってしまいそうだが、クリント・イーストウッドだからセーフ、みたいな属人的なところもあるかもしれない。

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 一方の冤罪の死刑囚は、もはやあきらめて現実を受け入れ、静かに最後の一日を過ごそうとしている。それにしても好きな食べ物をリクエストできたり、妻や娘と過ごせたりと色々とわがままを聞いてもらえるずいぶんと快適な環境だ。彼は無実だろうと思っているから見ていられるが、凶悪事件の加害者がこんな待遇を受けているのを見たらまた違った感想を抱いてしまいそうだ。そういえばこの頃はよく死刑をテーマにした映画が作られていたなと思い出したりした。

デッドマン・ウォーキング

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 主人公と死刑囚は途中で一度しか顔を合わせないが、ここが主人公の男らしさが爆発する見せ場となっている。銃も使わず誰も殴らないのに、それでも主人公のタフガイぶりがしっかりと伝わってくるのはさすがだ。

 

 正直なところ、検察や被告側、マスコミなどが長年関わり、誰も気づかなかったのに、わずか数時間で主人公が気づき、一日で解決まで持って行ってしまう展開はさすがに無理があるような気がする。だが主人公が抱える問題も描きつつ、スリリングな展開で見せる映画だ。散りばめられた伏線をうまく回収し、重すぎず軽すぎずの程よいトーンで上手くまとめられている。多くを語らないエンディングも洒落ていた。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作/出演

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原作 真夜中の死線 (創元推理文庫)

 

出演 イザイア・ワシントン/ジェームズ・ウッズ/リサ・ゲイ・ハミルトン

デニス・リアリー/バーナード・ヒル/フランシス・フィッシャー/ダイアン・ヴェノーラ/デイル・ポーターハウス    マイケル・ジェッター/メアリー・マコーマック/マイケル・マッキーン/ジョン・フィン/シドニー・ターミア・ポワチエ/エリック・キング/クリスティーン・エバーソール/アンソニー・ザーブ/ルーシー・リュー/ウィリアム・ウィンダム

 

音楽 レニー・ニーハウス

 

撮影 ジャック・N・グリーン

 

トゥルー・クライム(字幕版)

トゥルー・クライム(字幕版)

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トゥルー・クライム (1999年の映画) - Wikipedia

 

 

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