★★★★☆
あらすじ
有罪確実だと思われた裁判の、評決に至るまでの陪審員たちの密室劇。第7回ベルリン国際映画祭金熊賞。
感想
場面はほぼ陪審員室だけだが、それでもしっかりと飽きさせることなく見せる。ちゃんと十二人みんなに見せ場があるのもすごい。
誰もが有罪が確実と思うような裁判で、一人の異論から様々な意見が飛び出し、次第に形勢が逆転していく過程は見応えがある。そしてその中で番号でしか認識されていなかった陪審員たちの人物像が浮かび上がってくる。移民として苦労してきた者や、スラム街出身の者、親子の問題を抱える者などがいる。
最終的に評決は当初の予想が覆るわけだが、じゃあ実際の犯人はだれだったのか、本当に彼は無罪なのか、真相が明らかにされないところはモヤモヤする所ではある。あと、ヘンリー・フォンダ演じる男の自信満々すぎる態度もなんだか気になった。まぁ彼がいなければ映画にすらならないわけだが、怪しいほどに自信満々だ。
陪審員が男だけというのもよく考えると違和感があったので調べてみたら、当時はまだ女性が陪審員に選ばれることはなく、これが普通だったようだ。
しかし、陪審員制度はいろいろと興味深い。この映画でも、もしヘンリー・フォンダ演じる男が異論を唱えなければ、被告はあっさりと有罪となっていたし、逆に本当は有罪なのに、もしかしたらヘンリー・フォンダがミスリードしたという可能性も無くはない。一般市民が本当に真実を見極め、正当な判断が出来るのかという不安もある。とはいえプロである裁判官による裁判にだって疑問が残る判決もあるわけだが。結局、人が人を裁くというのはどのような制度であれ、難しいという事だ。
これを見ると日本の裁判員制度についても語りたくなるが、きっと多くの人と同じ心配事だから止めておく。
スタッフ/キャスト
監督
製作/出演 ヘンリー・フォンダ
出演 マーティン・バルサム/リー・J・コップ/エド・ベグリー/E・G・マーシャル/ジョン・フィードラー/ジャック・クラグマン/ジャック・ウォーデン/ロバート・ウェッバー
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