★★☆☆☆
あらすじ
飲酒運転でひき逃げをしてしまった検察官。だが翌日、別の男が逮捕され、主人公はその裁判を担当することになる。
感想
仕事は順調で、子供も生まれ幸せな家庭を持つ主人公。しかし、ある日飲酒運転で人を轢いてしまう。タクシーで帰ろうとするも、乗って来た車の周りに怪しい男たちがたむろしているのを見て心配になり、車で帰ることにする、という風に、優秀で金もある人間がリスクを冒すに至った過程が丁寧に描かれている。
帰りはタクシーで帰ろうと思っている人間が、繁華街に一晩路上駐車するつもりだったのか?と若干疑問は残るが、この町ではそれが普通なのだろう。そして、パニックになり現場から逃走してしまうのもよく理解できる。
帰宅後すぐに証拠隠滅を図り不安な夜を過ごした主人公は、翌日に別の男が逮捕されるという意外な展開に戸惑う。男が犯人でないと知りながら、検事として彼を有罪に追い込むことに良心が咎め、いつもの調子が出ない。
ひき逃げという誰にも相談できない類の秘密ということで、冒頭には分かりやすかった心理描写が、この辺りから分かりづらくなってしまう。誰ともしゃべらないので心情をセリフで表すことができなくなり、主人公が真実が露呈することを恐れているのか、濡れ衣を着せようとすることに罪の意識を感じているのか、それとも開き直って誤魔化しきろうとしているのか、心の動きが分からず曖昧になってしまった。
容疑者となったサミュエル・L・ジャクソン演じる男の素性が徐々に明らかになっていき、やがては主人公と対決することになるのだが、この辺りからどんどんと映画が駄目になっていく。全然、容疑者の男の心の闇や犯行を重ねる心理が描かれておらず、まるで記号のような扱いだ。主人公に狙いを定めた理由もよく意味が分からない。
そして主人公の行動もよくわからない。真実を知っている容疑者の口を封じたかったのか、犯行を明らかにしたかったのか。しかし容疑者を捕まえたとしたら、自動的に自分の罪も露呈してしまうわけだが。ひき逃げの罪を誤魔化すためにいろいろやったのに、結局自分が捕まっているし。
最後の二人の対決もあっさりとしたものだった。え?これで終わり?と逆に意表を突かれてしまった。もう少し二人の因縁を積み上げるとか、駆け引きをしてほしかった。もっと言えば、横やりが入ったので対決ですらなかった。偶発的な事故で解決してしまった印象で、あまりにも淡白すぎだ。
こんな風にモヤモヤが爆発してしまうのは、飲酒運転でひき逃げした主人公の扱いに困惑するからだろう。いくら主人公が凶悪犯と対峙した所で、ひき逃げ犯に全力で肩入れできないのは当然だ。それが何でハッピーエンドを迎えているのだ?と、妙に長いエンディングロールを眺めながら、徐々に理不尽が頭の中を駆け巡る。
スタッフ・キャスト
監督 ピーター・ハウイット
出演 ドミニク・クーパー
エリン・カルプラック/グロリア・ルーベン