★★★★☆
あらすじ
豊臣秀吉に取り立てられ頭角を現した石田三成は、秀吉の死後、我が物顔で振る舞うようになった徳川家康と対立を深めていく。
関ケ原の戦いを石田三成側から描く。149分。
感想
序盤は関ヶ原の戦いに至るまでの主人公・石田三成の働きぶりや、秀吉死後の家康との対立が深まっていく過程が簡単に描かれていく。監督独特の敢えてセリフをかぶせたりする聞き取りやすさよりも空気感を重視するスタイルは、ざわざわとした臨場感のあるシーンを生み出して惹きつけられるが、逆にストーリーが分かりづらくなる両刃の剣でもある。
関ヶ原に至るまでの経緯はなんとなく知っていたので、なんとかストーリーに付いていけたが、それでも今やってるシーンがその過程のどの出来事に当てはまるのかが、はっきりとは分からなかった。だいたいそのちょっと後であれかと気付くような感じで、時差があった。見終わった後に改めてWikipediaでこの経緯を確認してしまった。
だからあまり歴史に詳しくない人には、何が起きているのかがよく分からないかもしれない。この映画は関ヶ原の戦いに関する基本的な事柄を、観客がちゃんと知っている前提で作っている。しかし詳細を知らなくても、両者の対立が深まり、対決が避けられない状況に陥りつつあるのは、雰囲気からビシバシと伝わってくる。観客を置き去りにしない物語の推進力はある。
そしていよいよ天下分け目の戦いが始まる。だが、ここでも戦いの全体像や戦況の詳しい説明はない。それでも硬軟おりまぜ、時に弱ささえもさらけ出す役所広司演じる徳川家康のどっしりとした大物ぶりと、ひたすらくそ真面目で融通の利かない三成のせせこましさを見ていたら、どちらが勝つかは自ずと分かってしまう。それにしても三成の人望のなさには哀しいものがあった。
有村架純演じる忍者のエピソードも物語の良いスパイスとなっている。彼女の存在がなければ、結末はもっと悲惨さを感じるものになっていたはずだ。彼女の存在がわずかな救いとなっていた。
そもそもが映画の尺ではすべてを描き切れないので、なんとなく伝わるような、雰囲気を重視したものにしたのかもしれない。分かりやすくはないが、それぞれの歴史の知識レベルに応じて楽しめる内容となっている。鑑賞後にもっと知りたいと、知識欲が高まる映画でもある。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 原田眞人
出演 岡田准一/有村架純/平岳大/東出昌大/北村有起哉/伊藤歩/中嶋しゅう/音尾琢真/松角洋平/和田正人/キムラ緑子/滝藤賢一/大場泰正/中越典子/壇蜜/西岡徳馬/(声)木場勝己/麿赤児/中村育二/吉村界人/堀部圭亮/三浦誠己/橋本じゅん/安藤裕子
編集/出演 原田遊人
登場する人物
石田三成/徳川家康/島左近/井伊直政/本多正信/豊臣秀吉/小早川秀秋/前田利家/北政所/淀殿/一の台/上杉景勝/直江兼続/宇喜多秀家/大谷刑部/島津惟新入道/安国寺恵瓊/長束正家/前田玄以/小西行長/毛利輝元/増田長盛/福島正則/加藤清正/黒田長政/浅野長政/細川忠興/池田輝政/浅野幸長/加藤嘉明/本多忠勝/松平忠吉/阿茶/八十島助左衛門/島津豊久/長寿院盛淳/中馬大蔵/柏木源藤/毛谷主水/島信勝/柳生又右衛門宗矩/柳生五郎右衛門宗章/柳生石舟斎宗厳/杉江勘兵衛/前野兵庫/明石掃部/平岡頼勝/辰姫/可児才蔵/菅六之助