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「オットーという男」 2022

オットーという男

★★★☆☆

 

あらすじ

 近所の住民に文句ばかり言っている気難しい初老の男は、半年前に死んだ妻の後を追うつもりでいたが、向かいに引っ越してきた家族にペースを乱されてしまう。

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 2015年のスウェーデン映画「幸せなひとりぼっち」のリメイク作品。126分。

 

感想

 気難しい初老の男が、近所に引っ越してきた家族との交流を通して、変化していく様子が描かれる。彼の気難しさの遠因は愛する妻を失ったことだが、何十年も前の話かと思っていたら、わずか半年前の出来事だったのは意外だった。孤独を募らせ、長い年月をかけてではなく、この半年で急激に気難しくなったということなのだろうか。

 

 ただ近所の人たちが、嫌味を言われてもそこまで彼を毛嫌いしているようには見えなかったのは、だからかと腑に落ちるところはあった。奥さんを亡くしたばかりなのだからと、広い心で受け止めようとする思いやりの気持ちが見えた。

 

 

 仕事を辞め、電気やガスも止めて、妻の後を追おうとしていた主人公だが、引っ越してきた向かいの一家が気になって、何度も取り止めることになる。どうせもう死ぬのだから後のことなんてどうだっていいのにと笑ってしまったが、彼の律儀な性格がよく表れている。

 

 彼が近所の人に小言を言ったりするのも、その律義さゆえだろう。口うるさい近所の嫌われ者というのはどこにでもいるものだが、彼らはたいがい暇を持て余して使命感に目覚め、正義マンと化してしまった孤独な人間というのが相場だ。だが主人公は若干タイプが違う。

 

 彼は自分の存在意義を確かめ、絶対的な正義に酔いしれたいわけではなく、ただ自分やその延長線上として隣近所が快適に過ごせるようにと気を配っているだけだ。暇つぶしにやっているわけでもない。自宅の前の歩道を毎日雪かきするのもその表れだろう。

 

 その他にも、頼まれたら協力するし、頼まれなくても修理してしまうこともあるしで、実は彼が嫌な奴でないことが早い段階でバレてしまっている。そんな中で、隣人の運転の練習に付き合うシーンでの主人公の振る舞いやそこでかける励ましの言葉にはジーンと来てしまった。彼の誠実さに胸を打たれる。

 

 妻や家族のためだけでなく、それを拡大してコミュニティのために生きるという生き方もある。彼にそれを気づかせてくれたのは向かいの家族だが、彼らが行った図々しくてお節介な介入もまた、コミュニティの機能と言えるだろう。鬱陶しく感じる時もあるが、それはそれで誰かを助けることもある。

 

 次第に心がほどけていく主人公を、トム・ハンクスが見事に演じている。心温まる話ではあるが、類型的で想定の範囲内に収まってしまっているのが物足りない。とぼけた味わいのユーモアも伝わりづらく、分かりづらいものが多かったのも残念だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作総指揮 マーク・フォースター

 

原作 幸せなひとりぼっち (ハヤカワ文庫 NV ハ 35-1)

 

製作 リタ・ウィルソン/フレデリク・ヴィークストレム・ニカストロ/ゲイリー・ゴーツマン

 

製作/出演 トム・ハンクス

 

出演 マリアナ・トレビーニョ/レイチェル・ケラー/マヌエル・ガルシア=ルルフォ

 

音楽    トーマス・ニューマン

 

オットーという男

オットーという男

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オットーという男 - Wikipedia

 

 

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