★★★★☆
あらすじ
不法移民として連行された女に、息子を助けてほしいと頼まれた移民局の男。
感想
ハリソン・フォードの国境を舞台にしたアクション映画、とポスターではミスリードしている感もあるが、実際は不法滞在者と彼らに関わる人間たちの群像劇だ。ちなみに「I.C.E」はImmigration and Customs Enforcement(移民・関税執行局)の略。
別々の物語が同時に進行するが、それぞれの登場人物たちがどこかでつながっている。どこか映画「クラッシュ」を思い起こさせるような映画だが、あの映画ほど人物描写は豊かではない。
この物語を見ていると、祖国で暮らすことに危険を感じたこともないし、リスクを犯してまでもアメリカに行きたいと思ったこともない自分は恵まれた環境にいるんだな、と思い知らされる。世界にはそうじゃない人たちがたくさんいて、アメリカを目指している。
そんな移民たちに起きる悲喜こもごも。彼らにも、アメリカで成功したいと思っている者から祖国にいられないから仕方なく生活している者、親に連れられてよく分からずにやって来た者、祖国にシンパシーを感じアメリカに反感を覚えている者など様々である。
そんな彼らに関わる人間たちも様々だ。同じ人間として接する者や同情を持って接する者、彼らの弱みにつけこむ者、同じ人間として見ていない者。たまたま運良くアメリカに生まれた者が、運悪く悲惨な国に生まれた者を見下したように扱うのはなんなのだろうか。「囚人と看守」と同様な心理状態になってしまっているということか。
とはいえ、どんな事情があるにせよ、不法なので見つかれば強制退去になるのは仕方がないのかなと思わなくはないのだが、赤ん坊の頃に親に連れられアメリカにやって来て、祖国の言葉や文化をほとんど知らないのに祖国に帰れと言われたら流石に辛い。さらに親は不法移民だが、アメリカで生まれた子供はアメリカ人なので家族が離れ離れになったりと、なかなか移民の問題は一筋縄ではいかない難しさがある。暴論ではあるけども、国境に壁を作ればいい、と言いたくなるのも分からなくもない。
それぞれの物語が見事につながっていて映画としては面白いのだが、そのどれもがほぼ悲しい結末になってしまっているのが切ない。でもそれが現実なのだろう。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ウェイン・クラマー
製作 フランク・マーシャル/グレッグ・テイラー
出演
レイ・リオッタ/アシュレイ・ジャッド/ジム・スタージェス/クリフ・カーティス/アリシー・ブラガ/アリス・イヴ/ジャスティン・チョン/イ・スンヒ/クリストファー・マレー
正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官 - Wikipedia
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